「さ……さん……した」
桜智さんどーしたのっ?
そう言いたいのに掠れて、声が出せない。
血が、床に染みている。
うっかり触ってしまい、手が赤く濡れる。
変に生ぬるく、さっきまで生きていた痕跡のようだった。
そこまで鮮明に思い出したところで、呼吸が苦しくなる。
変に速い。
これはまずいと、自分でもわかった。
「あ、もしかして、忘れてた系?きっと、子供のあんたには、残酷すぎたんだよっ!まぁ、かなり適当に殺しちゃったもんねぇ?」
罪悪感など一ミリもない、無邪気な言い方に対して嫌気を覚える。
心臓が飛び出てくるかのような感覚に陥る。
正直、食べたものが逆流してきそうだった。
「うわぁ、お子さんいらっしゃったんですかぁ。殺すのもめんどくさいし、いいけど」
笑ったままの、血で汚れた小さい夜雨が言った。
「……」
俺の涙が溢れて、血と混ざる。
「さ、桜智さぁぁぁんっ。起きてよぉ、起きてぇ」
俺の泣き声が響いた。
泣かれてめんどくさい顔を隠すように、明るく夜雨は切り出した。
「僕は夜雨。君を勧誘しにきたの。僕らの殺し屋の団体にどうかな?」
「いやぁぁ。桜智さん、動けなくしちゃったんでしょぉぉっ」
全く返答になっていない。
それでも、夜雨は笑顔だ。
違う。
目が笑っていない。
「君のために、桜智さんを僕が殺したんだよ?邪魔だなぁっておもって。ねぇ?」
目を瞑ったままの、桜智さんの顔に、夜雨の顔が近づいた。
一瞬だけ、桜智さんが動いたような気がした。
風が少し吹いただけかもしれない。
そう思っていたが、桜智さんは微かに目を開けた。
「さすが、一流の殺し屋だけあるねぇ。まだ生きてたんだ?」
もっと顔見せてよ、と夜雨が桜智さんの前髪を手で上げようと距離を縮める。
待ってましたと言わんばかりに、距離が一番近くなったその瞬間、手に持っていた包丁を夜雨に振りかざす。
夜雨は一歩後ずさる。
ヒュッ
包丁が音を立てる。
ギリギリで避けた……かと思いきや、夜雨の右目に当たってすごい量の血が出ていた。
「ああっ、もう手こずらせやがって!」
混乱した夜雨が彼を殺そうとした、その時。
「お前に殺されてたまるかっ」
桜智さんは、包丁を、自分の腹部に刺す。
血が舞う。
自分で自分を斬って、死んだ。
知らぬ間に、夜雨はいなくなっていた。
「……俺のせ、いで、桜智さ……んは……っ」
……俺が、桜智さんに殺されていれば、彼は死ななかったのか?
「そう、この傷も、桜智さん?とか言うやつにつけられたんだよねぇ」
そう言いながら右の古傷を指差す。
あ、と言うような声に沈黙が遮られた。
「話逸れちゃったねぇ。で、僕がしたいのは二回目の勧誘!一緒に、一夜さんを殺そうよ」
「い、ちやを……」
本当に、気持ち悪い。
吐き気がする。
思い出してからと言うもの、耐え難い気持ち悪さに襲われていた。
……桜智さんは、俺のせいで……、
死んだんだ。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
俺のせいで、大事な人が死ぬの?
「なん……で、殺したい……?」
苦しい。
息が詰まる感覚がする。
「邪魔。今のあいつは、僕と互角だから」
やけに淡白に響く声。
少し口角が上がる。
俺はここに来てから、初めて笑った気がする。
「お前なんかに、あいつがやられるはずねぇじゃん!」
「そうかなぁ。僕は彼女が持っていない、頭脳を持ってるよ?」
そんなに、自信があるのなら。
俺が、一夜を守るために、死んでも戦おう。
俺の相棒に恩返しをするために。
縛られていたが、縄抜けくらい簡単にできる。
頭脳担当だからな。
立ち上がって、体を慣らす。
武器は全て回収されていたので、素手で戦うしかない。
不利だし、俺は死ぬかもしれない。
だけど……
「お前なんかに、俺の恋人を殺させる気ねぇからな」
自分を鼓舞させるように言って、まっすぐ夜雨に向かって走る。
……逃げろよ?一夜っ!
桜智さんどーしたのっ?
そう言いたいのに掠れて、声が出せない。
血が、床に染みている。
うっかり触ってしまい、手が赤く濡れる。
変に生ぬるく、さっきまで生きていた痕跡のようだった。
そこまで鮮明に思い出したところで、呼吸が苦しくなる。
変に速い。
これはまずいと、自分でもわかった。
「あ、もしかして、忘れてた系?きっと、子供のあんたには、残酷すぎたんだよっ!まぁ、かなり適当に殺しちゃったもんねぇ?」
罪悪感など一ミリもない、無邪気な言い方に対して嫌気を覚える。
心臓が飛び出てくるかのような感覚に陥る。
正直、食べたものが逆流してきそうだった。
「うわぁ、お子さんいらっしゃったんですかぁ。殺すのもめんどくさいし、いいけど」
笑ったままの、血で汚れた小さい夜雨が言った。
「……」
俺の涙が溢れて、血と混ざる。
「さ、桜智さぁぁぁんっ。起きてよぉ、起きてぇ」
俺の泣き声が響いた。
泣かれてめんどくさい顔を隠すように、明るく夜雨は切り出した。
「僕は夜雨。君を勧誘しにきたの。僕らの殺し屋の団体にどうかな?」
「いやぁぁ。桜智さん、動けなくしちゃったんでしょぉぉっ」
全く返答になっていない。
それでも、夜雨は笑顔だ。
違う。
目が笑っていない。
「君のために、桜智さんを僕が殺したんだよ?邪魔だなぁっておもって。ねぇ?」
目を瞑ったままの、桜智さんの顔に、夜雨の顔が近づいた。
一瞬だけ、桜智さんが動いたような気がした。
風が少し吹いただけかもしれない。
そう思っていたが、桜智さんは微かに目を開けた。
「さすが、一流の殺し屋だけあるねぇ。まだ生きてたんだ?」
もっと顔見せてよ、と夜雨が桜智さんの前髪を手で上げようと距離を縮める。
待ってましたと言わんばかりに、距離が一番近くなったその瞬間、手に持っていた包丁を夜雨に振りかざす。
夜雨は一歩後ずさる。
ヒュッ
包丁が音を立てる。
ギリギリで避けた……かと思いきや、夜雨の右目に当たってすごい量の血が出ていた。
「ああっ、もう手こずらせやがって!」
混乱した夜雨が彼を殺そうとした、その時。
「お前に殺されてたまるかっ」
桜智さんは、包丁を、自分の腹部に刺す。
血が舞う。
自分で自分を斬って、死んだ。
知らぬ間に、夜雨はいなくなっていた。
「……俺のせ、いで、桜智さ……んは……っ」
……俺が、桜智さんに殺されていれば、彼は死ななかったのか?
「そう、この傷も、桜智さん?とか言うやつにつけられたんだよねぇ」
そう言いながら右の古傷を指差す。
あ、と言うような声に沈黙が遮られた。
「話逸れちゃったねぇ。で、僕がしたいのは二回目の勧誘!一緒に、一夜さんを殺そうよ」
「い、ちやを……」
本当に、気持ち悪い。
吐き気がする。
思い出してからと言うもの、耐え難い気持ち悪さに襲われていた。
……桜智さんは、俺のせいで……、
死んだんだ。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。
俺のせいで、大事な人が死ぬの?
「なん……で、殺したい……?」
苦しい。
息が詰まる感覚がする。
「邪魔。今のあいつは、僕と互角だから」
やけに淡白に響く声。
少し口角が上がる。
俺はここに来てから、初めて笑った気がする。
「お前なんかに、あいつがやられるはずねぇじゃん!」
「そうかなぁ。僕は彼女が持っていない、頭脳を持ってるよ?」
そんなに、自信があるのなら。
俺が、一夜を守るために、死んでも戦おう。
俺の相棒に恩返しをするために。
縛られていたが、縄抜けくらい簡単にできる。
頭脳担当だからな。
立ち上がって、体を慣らす。
武器は全て回収されていたので、素手で戦うしかない。
不利だし、俺は死ぬかもしれない。
だけど……
「お前なんかに、俺の恋人を殺させる気ねぇからな」
自分を鼓舞させるように言って、まっすぐ夜雨に向かって走る。
……逃げろよ?一夜っ!



