殺し屋のご飯

   〜深月side〜

 息をするたびに、肺が軋む感覚がして起きた。

 広いコンクリートだけの場所で手を太い縄で縛られていた。

 インカムは、もう壊れて使えない。

 「……動けねぇ、か」

 体を動かそうとするたびに、全身がジクジクと痛む。

 動くどころか、息をするのも苦。

 結局、一回の殴りだけでは気絶できなかった俺は、気絶するまで何度も何度も攻撃を受けた。
 惨めだ。

 「おぉっ!起きた?深月くん?」

 日野が俺の前で楽しそうにニコニコと笑っている。
 本当に楽しそうに。

 「お前、誰だ?」

 「えっ?そりゃぁ、日野心だよ!」

 日野らしき人が目を丸くする。

 「違うだろ?お前は、日野じゃない」

 「え?どうしてそう思ったのかなぁ」

 「お前、右利きだろ」

 彼は、今日会ったとき右で手を振っていた。

 「そりゃあね。でもなんで?」

 「俺が前会った時の、日野は左利きだったから」

 前、ハサミの訓練を一夜とした時があった。

 あの時、わざわざ別のハサミを俺に手渡した。
 きっとあのハサミは左利き用だったのだ。

 「それだけだと流石に断定できないでしょ」

 「……今日の朝会った時、普通に呼び方ミスってたし」

 それと大事なのがもう一つ。

 ただのヤンキー集団が、秘密文書を盗むなんておかしい。
 もしかしたら、本当はめちゃくちゃ強い集団かもしれない。
 
 そう思った俺は一昨日、日野に直接『誰にも言わずに休め』とお願いした。

 なのに、彼は来た。

 だから、ずっと疑っていた。

 「はぁぁぁっ。もう騙せなさそうだし面倒くさいから、言うね」

 彼が大きなため息をする間に、日野の顔が違う人の顔に変わっていた。

 もっと可愛らしい、中性的な顔。

 大きく整った右目には、特徴的な古傷の痕があった。

 おそらく、中学生。

 「僕は、夜雨。お会いするのは二回目かなぁっ。そうそう、あんたの親を殺してあげた時!」