犬猿アイドル、なぜか最強バディ⁉︎

その後のステージは、驚くくらいうまくいった。
 機材トラブルなんてなかったみたいに、会場は最後まで大盛り上がりだった。
 曲が終わるたびに歓声が上がり、色とりどりのペンライトが夜空を揺れる。
 最後のあいさつを終え、ステージ袖へ戻った瞬間。

「お疲れさまー!!」

 スタッフさんたちが拍手で迎えてくれた。

「アカペラ対応、最高だったよ!」
「さすがLuminous!」
「途中の掛け合い、めちゃくちゃ盛り上がってた!」

 口々に褒められて、僕はようやく肩の力を抜いた。
 叶斗はというと、得意げに胸を張っている。

「まあ? 俺ら天才なんで?」
「調子乗らない」

 即ツッコむと、近くのスタッフさんが吹き出した。

「ほんと、かなみなって感じだったね〜!」

 その時だった。

「湊くん! 叶斗くん!」

 マネージャーさんがスマホを片手に駆け寄ってくる。

「SNSの反応、すごいわよ!」

 画面をのぞき込むと、たくさんのコメントが流れていた。

『かなみな最高すぎた!』
『アカペラ鳥肌』
『不仲説どこいった?』
『ケンカしてても息ぴったりなの強すぎる』
『むしろ今日ので絆感じたんだけど!?』

 思わず、ほっと息が漏れる。
 ……よかった。
 ちゃんと伝わったんだ。
 隣を見ると、叶斗もスマホをのぞき込みながらにやにやしていた。

「ほら見ろ〜。俺ら最強じゃん」
「自分で言う?」
「事実だし?」

 その言い方がなんだか腹立つ。

「というか、急にアカペラ振るのやめてくれない?」
「えー。でも湊、ちゃんと合わせてくれたじゃん」
「合わせないと事故ると思ったから」
「素直じゃないな〜」

 すると、マネージャーさんがくすくす笑った。

「はいはい、そこまで〜」
「だってこいつ、無茶振りして――」
「でも成功したじゃん」
「結果論!」

 僕が言い返すと、叶斗がけらけら笑う。

「湊、今日ツッコミ冴えてたな」
「誰のせいだと思ってるの」
「俺?」
「わかってるなら改善して」

 またスタッフさんたちが笑い出す。
 ほんと、なんなんだこの人。
 でも。

「……まあ」

 僕がぼそっとつぶやく。

「今日のステージは、悪くなかったけど」

 その瞬間、叶斗がぱっとこっちを向いた。

「え、今ほめた?」
「ほめてない」
「いや絶対ほめた」
「気のせい」
「録音しとけばよかった〜!」
「してたら壊してた」
「こわ」

 そんな言い合いをしながら、僕たちは並んで旅館への夜道を歩き出す。
 温泉街にはまだ、フェスのにぎやかな余韻が残っていた。
 たぶんこれからも、僕たちはケンカする。
 価値観は合わないし、腹が立つことも多い。
 仲良しコンビ、なんて言われても困る。
 でも。
 ステージの上でだけは。
 たぶん、誰より息が合う。
 それだけは、ずっと変わらない気がした。

「ていうか叶斗」
「なに」
「さっきハモり外したでしょ」
「は⁉︎」
「0.2秒くらいズレてた」
「細かっ!」
「事実だから」
「ズレたうちに入らないって!」
「いや、ズレてた」
「ズレてない!」

 温泉街の夜道に、僕たちの言い合う声が響く。
 ――今夜も、かなみなは通常運転だった。