クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。


それから念願のグッズを買い、無理やり暁にもペンライトをもたせ、遂にライブが始まった。


「キャーッ!! レイナちゃーん!!」
会場が暗転し、ステージにMISSAのメンバーが登場した瞬間。

私は少しだけ感じていたそわそわ感なんてすっかり忘れて、完全に「いちファン」の顔になっていた。

「L・O・V・E! レイナ!!」

両手に持ったペンライトを曲に合わせて振りながら、完璧なコールを送る。

生で見る推しは本当にキラキラしていて、私は感動で泣きそうになりながらステージを見つめていた。

ふと、曲の合間のMCの時間になって
私が「はぁ、可愛すぎ……」と一息ついた時。

隣から、小さく吹き出すような声が聞こえた。

「……あき? 何笑ってんの」

私が横を見ると、あきはパイプ椅子に浅く座って頬杖をつきながら、すごく楽しそうに笑っていた。

「いや、ももの熱量がすごくて。お前、そんな動きできたんだなって感心してた」

「もうっ、からかわないでよ。ていうか、あき全然ステージ見てないじゃん! せっかく来たんだから、レイナちゃんのダンス見てってば!」

私がステージの方を指差すと、あきは素直に「はいはい」と頷いた。

でも、その顔はやっぱり笑っていて。

「見てるよ。でも、ももが全力すぎて面白くて。なんか、見てて飽きない」

「えっ……」

あきの少し低くて甘い声が、ライブの重低音に紛れてスッと耳に届いた。

頬杖をついたまま私を見るその目は、何万ものファンが熱狂している華やかなステージじゃなくて、汗だくでペンライトを振っている私だけを、真っ直ぐに、そしてすごく優しく映していた。

「な、なにそれ……。バカにしてるんでしょ」

「してないって。ほら、次の曲始まるぞ。しっかり応援しろー」

あきはそう言って、私の頭をポンと撫でた。

「(……もうっ)」

私は慌ててステージに向き直ったけれど、心臓が変なリズムで跳ねていて、さっきまでみたいに全力でコールができなかった。

華やかなアイドルのライブの最中。

隣を見れば、私のことばかり見て優しく笑っている幼なじみがいる。

彼にとっては、ただの「手のかかる幼馴染」を見るような、昔から変わらない愛情表現なんだろう。

でも、この時のあきの甘くて優しい眼差しは、私の心の中に「ただの幼なじみ」とは違う、小さな恋の種を確実に落としていったのだ。