「どうしよう、ももちゃん…!本当に暁、受かっちゃった…」
動揺を隠せない暁ママが、私にスマホの画面を見せてきた。
そこには【1次審査合格のお知らせ】から始まる文面が映し出されている。
それを読んでいくと…
「第2次審査からオーディション番組の撮影が入ります。…その後、第3次審査からはサバイバルオーディションとなります。その様子も番組内で放送予定です…?」
「そうなのよ!だから暁、テレビに出ることになるの!」
「え、ザバ番ってこと!?」
最近よく目にするサバイバルオーディション番組。
MISSAも所属する大手事務所だから、盛り上がる事は間違いなしだ。
そのサバ番に、暁が出るの!?
私には初耳な情報で、ビックリしすぎて固まっていると
「まーた2人だけで勝手に騒いでる」
暁が部屋に入ってきた。
「暁、どうする?お母さんとももちゃんが盛り上がって勝手にオーディション応援しちゃったようなものだから、暁が嫌なら辞退してもいいのよ」
サバ番って厳しいレッスンや課題をクリアしてどんどん審査に受かっていかなきゃいけないから、普通の形式のオーディションよりも過酷だ。
しかも、最終審査では審査員による審査に加えて、視聴者投票も取り入れられる場合もあって、それでも結果がかなり左右される。
オーディション中に、どれだけのファンがつくかも大事になってくる。
(暁なら絶対に人気でる!…だけど、)
暁は歌は本当に上手い。
だけどダンスは完全に未経験だ。
しかも歌いながら踊るとなると、また次元が違う。
暁にとっては絶対に大変だし、辛い経験になるのは目に見えている。
「うーん…ももはどう思う?」
考え込んでいると、暁がこちらに話をふってきた。
さっきの2人っきりの甘い言葉をかけてくれた暁とは違って、真剣な顔をしている。
その表情に、またドキッと胸が跳ねる。
「オーディション絶対に大変だろうし、暁に辛い思いしてほしくはないけど…」
「うん」
「…私は、暁はアイドルになると思う」
「……はっ」
私がそう言うと、暁は吹き出して短く笑って、でもどこか、少し寂しそうな表情を浮かべている。
「暁…?」
「それどういう事か分かって言ってる?」
「…ん??」
「俺がアイドルになったら、もうこうやって会えなくなるけど…いいの?」
「……っ!!」
私をまっすぐ見てくる暁。
思わず顔が赤くなる。
そしてハッとして横をみると、暁ママも私と同じように目を丸くして「まぁ!」と頬を赤らめていた。
(暁ママいるのに…!急にデレるじゃん!!かわいいかよ!!)
「そそ、そりゃ寂しいよ!でも暁がアイドルになったら私全力で応援するし、特典会とかライブとか、私がいっぱい会いに行くよ!?」
でもその私の言葉に、暁の瞳が一瞬だけスッと冷たく伏せられた気がした。
「ふーん。…ももは、それでいいわけね」
「…え?」
(…暁、それってどういう意味で言ってる…?)
私がポカンとしていると、暁がまたちょっと呆れたように笑って視線を逸らし、
「まーどうなるかまだ何も分からないし、やるだけやってみようかな」
「本当に!!??きゃー!!暁は絶対やらないっていうと思ってたのに!ももちゃん!暁、本当にアイドルになるかもね!!」
暁の一言に暁ママはまた興奮して「早速返信しなきゃ!」と部屋から出ていった。
