クソ真面目なアイドルに、幼なじみの一途が重症です。

-数日後-


暁が彼女と別れたという噂が、学校中に広まっていた。
もちろん私の耳にも入ってきて、私のクラスでもその話題で持ち切りだった。

その日の放課後。
下駄箱で暁が私の事を待ち構えていた。

「一緒に帰るぞ」

「え、うん…」

暁にそう言われて、驚いた。
自重してい事もあり、最近はほとんど一緒に帰る事なんてなかったから。(暁が過保護を発揮した時に1回だけあったけど…)
あの噂は本当なのかもしれない。

彼女が出来るまでは当たり前だったこの光景。
私が靴に履き替えると、「いくぞ」と少し前を歩く暁。

数ヶ月しか経っていないのに、やけに懐かしく感じてしまう。

季節はすっかり秋めいて、冷たい風が肌をかすめる帰り道。
いつものコンビニで肉まんを買い、まだ熱い肉まんを2人でふぅふぅして食べながら歩く。

そして暁が口を開いた。

「知ってるだろうけど、彼女と別れた」

「……うん。噂で聞いたよ」

暁からハッキリと聞かされた事実に、心の底で、ほんの少しだけホッと安堵してしまった。

(私、最低だな…)

それとセットのように罪悪感も押し寄せてきた。

私もそんなに鈍感じゃない。
最近の暁の過保護な行動は、私のせいでもある。
それが原因で別れたのなら、少なからず自分のせいでもあるからだ。
でも喉まで出てる『別れたのって、私が原因?』という言葉は、どうしても出てこなかった。
そんな事を言って、暁をこれ以上困らせたくない。

そのまま2人とも黙っで、並んで歩いていく。
少し気まずい空気が流れる中、手に持った肉まんもなかなか口に運べずにいると、気が付けば家の前まで辿り着いていた。

「じゃあね」

気まずい空気に耐えられず、早く暁と別れたくて私は手を振って、自分の家に帰ろうとした。
でも、

「…えっ」

振っていた手を握られ、そのまま手を引いて暁の家の方へと歩きだした。

暁は何も言わない。

「暁!?私、自分家に…」

「お前が来ないと、母さんが寂しがるから」

まるで、私を引き止めるように、その場しのぎみたいに放たれた言葉。
そして引かれている手をぎゅっと握りしめてくる。

前に居るから暁の表情は見えない。
今、どんな顔してるんだろ。

その好奇心で少し足早に歩き、隣に並んで暁の顔を覗き込めば、少し頬を赤らめた暁がいて、私と目が合うと睨みつけてきた。

(…かわいい)

「何だよ」

「へへ、めずらしく暁が必死だなーって」

「はあ?どこが」

「本当は暁が、家に来て欲しいんでしょー」

「…あー、はいはい。本当は1人の家に帰るのが寂しいくせに強がって我慢してる幼なじみが可哀想だから、気を遣ってやってるんですけど」

「はぁー?全然そんな事ないし!」

さっきまでの少し気まずい空気なんか無かったみたいに、ふざけあって笑い出した。

この感じが久しぶりすぎて、私は頬が緩みっぱなしだった。