「暁くん。……暁くんってば」
放課後の図書室。
俺は彼女である結衣と向かい合って座り、机に参考書やノートを広げ一緒に勉強をしていた。
「……あ、ごめん。何?」
「何?じゃないよ。暁くん、さっきからずっと窓の外ばっかり見てる」
結衣の視線の先、
グラウンドの隅っこに、掃除当番なのかゴミ袋を両手に持って重そうに歩いているももの姿があった。
それを追いかけて、クラスメイトであろう男子が後ろからかけより、ももの手からゴミ袋を取り上げている。
ももが『1個は持つよ!』と言っている様だが、男子は笑って楽しそうに駆け出していく。それを追いかけるもも。
そんな傍からみれば、ただ仲の良い男女のやり取りだ。
でも俺には、それが"もも"と"男子"という事で、心配とイラつきが混じり無意識に睨みつけてしまっていた。
「……見てないよ」
「嘘だね。今も凄い顔して睨みつけてたよ」
結衣はパタン、と読んでいた参考書を閉じ、少しだけ困ったように笑った。
「暁くんさ、最近ももちゃんに過保護すぎじゃない?ももちゃんが他の男子と話してるとすっごく不機嫌になるし、割って入って行ったりしてるでしょ?無意識かもだけど、今みたいにももちゃんがいたらずっと目で追ってるし……それ、彼女の私の前でやっちゃうくらい、もう余裕ないんじゃない?」
「…………っ」
図星を突かれ、俺はバツの悪そうに視線を落とした。
「……ごめん。アイツが危なっかしくて、つい……」
「『幼なじみだから』っていう言い訳はもうナシね。暁くんがももちゃんに向ける目は、『ただの幼なじみ』に向ける様なものじゃないもん」
結衣は机の上を片付けだし、立ち上がると自分のカバンにを手に取った。
「私、暁くんのこと好きだったけど。私の隣にいるのに、暁くんの心があの子ばっかりに向いてるのは、ちょっと寂しいかな」
「結衣……」
「別れよ。……あんなに目で追っちゃうくらい気になっちゃうなら、ちゃんと自分の気持ちと向き合いなよ。じゃあね、暁くん」
呆れと優しさが混じった笑顔。
結衣は最後にポンッと俺の肩を叩き、図書室を出て行った。
静かな図書室に一人残された俺は、ゴミを捨て終わり男子と話しながら歩くももの姿をみて、深く、深くため息をついた。
結衣の言う通りだった。
大輝の一件で、俺はももを守りきれなかった自分に腹が立ち、同時に「結衣という彼女がいながら、ももを他の男から守りたいと思ってしまう」自分の独占欲にも似た感情に自己嫌悪していた。
気づけば目で追って、他の男が近づけば勝手にイライラして感情まかせに動いて。挙句彼女にも呆れられてフラれる始末だ。
「……マジで、何やってんだ俺」
考えれば考えるほど、ももへの感情が『ただの幼なじみ』へ向ける感情では無いことを、嫌でも結論づけてくる。
その気持ちにどう向き合えばいいのか、今の俺には分からなかった。
