そして、昼休み。
私がお弁当を持って、友達と中庭に向かおうと廊下に出た時だった。
廊下の奥の方に人集りがみえる。
その人集りの中心に、見慣れた顔がみえた。
暁がいる…
「なになに?」
と、友達が近いていくのを、私も少し後ろから追いかけていく。
するとそこには異様な静けさと、緊張感に包まれた、暁と大輝くんがいた。
「……で? 『ちょっとからかっただけ』?」
普段は人懐っこい笑顔を絶やさない優しくて人気者の暁。
その彼が今、一切の感情を消した能面のような顔で、大輝くんを廊下の壁際に追い詰めていた。
「い、いや……だから、彼女だし、ちょっとスキンシップ取ろうとしただけで……」
引きつった愛想笑いを浮かべる大輝くん。
ドンッ!!
次の瞬間、暁の大きな手が大輝くんの顔の横の壁を激しく叩いた。
周囲の生徒たちがビクッと肩を震わせる。
「……スキンシップ?」
暁の声は、怒鳴っているわけではない。
むしろ普段よりずっと低く、静かだった。
けれど、その底冷えするような声色と、見下ろす漆黒の瞳には、一切の容赦がなかった。
「嫌がるあいつを無理やり押し倒すのがスキンシップか。お前、自分が何したか分かってんの」
「っ……」
逃げ道を完全に塞がれた大輝くんは、暁の放つ凄まじい威圧感に顔面を蒼白にして言葉を詰まらせた。
「あいつが昨日、どんな顔して帰ってきたか……お前に想像つくかよ」
暁は壁についていた手を離し、今度は大輝くんの肩をガシッと掴んだ。
ギリッ、と制服越しに骨が軋むほどの強い力で握り込み、顔を近づける。
「二度とあいつに近づくな。声もかけるな。視界にも入るな。……もし次、あいつを少しでも怯えさせたら、ただじゃ済まさないからな。冗談だと思うなら、試してみろ」
絶対に反撃を許さない、有無を言わせない絶対的な圧力。
大輝くんはガチガチと震えながら、何度も激しく首を縦に振ることしかできなかった。
「…あと変な噂も流してんじゃねーよ。ダサすぎ」
暁は、私が昨日マイクで殴ったことで腫れ上がってしまってる大輝くんの右頬を、手で弾くように触れた。
すると「…痛っ」と大輝くんから声が漏れる。
そんな大輝くんを心底汚いものでも見るかのように睨みつけ突き放した。
そして、周囲で息を呑んで見ていた生徒たちには目もくれず、苛立った足取りで自分の教室へと戻っていった。
