けれど、
その甘い自覚が「痛み」に変わるのに
時間はかからなかった。
休憩を終え、屋台に戻ろうと人気のあまりない神社裏を歩いていた時のことだ。
少し前を歩いていた暁が、誰かに呼び止められた。
「あの、早瀬くん……!」
声の主は、私のクラスでも「可愛い」と評判の暁と同じクラスの女の子だった。
浴衣姿で、顔を真っ赤にしてモジモジしている。
…そう言えばさっき、かき氷を買いに来てくれていたっけ。
(これって、もしかして…)
何かを察した私は、とっさに木の陰に身を隠してしまった。
「ずっと前から、早瀬くんのことが好きでした! もしよかったら、私と付き合ってください!」
静まり返る中、
女の子の震える声が
やけにハッキリと聞こえた。
(やっぱり告白だ………だめ、暁。断って。お願い……)
無意識の中で必死に、そう祈る事しかできなかった。
でも。
暁は少し驚いたように目を丸くした後、照れくさそうに首の後ろを掻いた。
「……俺でいいなら」
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
暁が、少し照れたように笑っていた。
私に向けられた事なんて、1度もない
初めてみる暁の顔だった。
ズキッ。
胸の奥を、鋭い針で深く刺されたような痛みが走った。
息がうまく吸えない。涙が溢れそうになって、私は音を立てないように必死でその場から逃げ出した。
私は暁が好きだ。
でも、暁にとって私は「ただの幼なじみ」であり、家族同然の存在でしかない。
さっき『彼女』って言われて、知らぬ間に自惚れていた。
でも、一番近くにいるのに、彼女という「特別なポジション」には、絶対に選ばれないんだ。
ー翌日-
暁は、昨日までと全く同じ態度で私に接してきた。
「おはよ。もも、お前昨日どこ消えたわけ?」
いつも通りに私の頭をガシガシと撫でるその手が、今はとてつもなく残酷に感じられた。
変わらない優しさが、今は何よりも痛い。
いつもの調子で「おはよう!」って返したいのに、言葉がでてこない。
このままじゃ、私はおかしくなってしまいそうだった。
