春になると記憶が欠ける

ハッと目が覚めた。あれは夢だったのだろうか。もう、驚かせないでほしいものだ。でも、ここはどこだろう。世界が真っ白で、ぼんやりとている。ものの輪郭が掴めない。
「春乃?!」
朝陽な声だ。朝陽の声がする。それだけですごく安心できた。
「目、覚めた?春ちゃん倒れちゃってさ、ここ、病院なんだ。」

「あ、その本、1巻目読んだことある?分かりづらいけどその本、シリーズ化されてるよね。それ、3巻だよね?」
蒼太に言われて初めて知った。そんなこと気にもしないで読んでいた。
「あるよ。」
見栄を張った。本当は読んだことなどあるはずもない。
私の記憶があるのはここまでだった。その後、私はふらついて倒れてしまったらしいのだ。幸い、横には朝陽がいて私を支えてくれたのだとか。何度惚れさせれば気が済むのだろうか。そんなことがまた、あれは夢だったのだ、と、決めつけられている気がした。