お目当てのバナナのムースケーキはまだ四つあった。サヨちゃんと二人、いくつ買おう? ケーキ、二つずつ買っちゃう?
とりあえず後で来たため、仁志君の注文を終えて声をかけようか。キラキラ、オルゴールの流れる店内、大きなガラス窓の奥には、厨房が見える。一人のパティシエさんがワンホールのスポンジケーキに生クリームをデコレーションする様子は、もっと近くで見てみたい。
「すみません、注文いいですか。苺のショートケーキを一つと……」
仁志君の落ち着いた声を、初めて近くで聞いた。高くも低くもない、空気を含むような声音で、四個、五個、六個、七個……結構頼むな。
「あと、バナナのムースケーキを」
二つって言った仁志君が、何故か突然、左に立つ私をパッと見た。
