──間もなく到着した通り沿いの洋菓子店の扉を開けた瞬間、クッキーを焼く時に香るバターの甘い匂いが鼻腔をくすぐった。
と同時に、腰を曲げてケーキのショーケースを眺める、何だか知ってるような後ろ姿を見つけた。
「いらっしゃいませ」
にこやかな店員さんが、新しいお客の私と、距離を空けた隣に立つ彼の注文を待つ。……仁志君?
チラッと一瞬横を見た、ケーキを眺める美しい横顔、やはり仁志君だった。
ケーキ、買いに来た?
明日高井君がここのケーキを買って、誕生日の仁志君の所へ行く予定だ。今仁志君が選ぶケーキは高井君と食べる物だろうか。それとも全く違う?
友達でもない仁志君に突然声をかけるのって変。相手は自分が同じ学部の学生だと認識してない可能性だってある。誰だお前って。
