紺桔梗の転調





*

 午後6時、五限の講義も終わり、さて帰ろうか。午前中の課題のプレゼンが終わった午後は気が抜けて、ぼーっと過ごした。

 同じ講義が重なれば隣に座る友達が、ホワイトボードの文字をイレーザーで消す教授の元へ、ノートとシャーペンを持って行った。聞き逃した箇所を尋ねるらしい。

 いつも真面目で熱心な子だ。私は学内で大体この子と一緒にいる。共に紅茶愛好会に所属する、気の合う女の子だった。

 一日続く雨で、窓外の空は既に真っ暗。湿気でじっとり濡れた廊下も広めの階段も、転ばぬよう順番待ちに歩く学生で溢れる。地方都市のN街・N大学、この大きな五号館に、今一体どれ程の人間がいるのだろう。

 入口の傘立てのベージュの傘を抜き取る。広げて庇を出た瞬間、石突きにボタボタ、雨粒が落ちてきた。

 こんな雨だけど、私はこれからキャラメルバナナのケーキを買いに行く。高井君と話をして、無性に食べたくなったのだ。