女神アフディーと透明な子

 完璧な理性を持つアテーネには、その言葉の真意がすぐには理解できませんでした。

 メデューサは、そんなアテーネの困惑を見透かすように続けました。

「貴方も、なぜ私にあの子たちを会わせたのですか? あの魔法は、貴方の力ならとうに解けたはずでしょう」

 アテーネは少しの間、沈黙して考え込みました。

「正直に言うと、私にもわからないのです。ただ、アフディーに対し、身内を守るという正しい義務。それを果たそうという、思いは持っていました。ですが……」

 アテーネは、「やはりわからない」と、ため息をつくように語ります。

「あの子たちを注視していたら、あの小さな微笑みを見守っていたい、彼女の純粋な思いを大事にしてあげたい……いつしか、そんな気持ちに激しく揺れ動いてしまいました。だからなのでしょうか」

 メデューサは、その言葉を聞くと、呆れるように失笑しました。

「それが、姉妹というものですよ」

 メデューサはゆっくりと歩みだします。
 その時、彼女の頭にある考えがよぎりました。

(初めから、私に会わせるために、わざとあの子たちをこの森に……。まさか、ですね) 

 去っていくメデューサの背中を見つめながら、アテーネは自分の胸にそっと手を当てます。

 そこには、これまでの神としての人生で一度も味わったことのない、不器用で、ひどく曖昧な、不思議な感情が芽生えていました。