女神アフディーと透明な子

 アフディーが大きく手を振ると、ダイヤも走り近づいてきました。

「待ってよ、湖まで送っていくよ!」

 ペガサスが微笑むような表情で視線を向けると、メデューサは「お前も送っていっておあげ」と優しく促します。

 その言葉を聞き、ペガサスも二人の後を嬉しそうに追いかけていきました。

 静まり返った森に、張り詰めた空気が漂います。

  二人の姿が完全に見えなくなったのを見届けた時、暗闇の中から、肩にフクロウを乗せ、一冊の本を抱えた恰幅の良い女神が現れました。

 知恵と戦略を司る女神アテーネです。

 彼女の周りには、オリーブの葉と花が浮かび、ゆっくりと流れ回っていました。

 アテーネはメデューサの前に歩み寄り、静かに問いかけました。

「なぜ、あの子たちを逃がし、魔法まで解いてあげたのですか。貴方なら、私への復讐のために迷わず石にするはずでしょう」

 メデューサはアテーネを振り返ることもせず、静かに夜空を見上げました。

「貴方を許したわけではありません。ただ……あのユニコーンの姿を見て、かつて私を必死に守ろうとしてくれた、私の『姉』のことを思い出しただけです」

 自分を命がけで守ろうとしたダイヤの姿に、かつて共に怪物になる道を選んでくれた姉たちの無償の愛を、メデューサは重ね合わせていたのです。

「姉……?」