世界で一番、近くて遠い推しとの恋

〈Side 碧李〉
高校卒業後に結成した5人組アイドルグループ・Froove。
ついに3か月後にデビューすることを発表した。
やっとだ。
他のグループに比べたら下積みは短いし、経験不足だと言われることもある。
でも、俺はそれでも売れたい。
だから・・・。

『突然ごめん。別れよう』

大好きな彼女に、別れを告げた。

『え?急にどうしたの?』

すぐに既読がつき、なんて返そうか迷う。
彼女・・・音桜を傷つけたくない。
いや・・・別れを告げている時点でもう傷つけてしまってるか。
迷った結果、

『ほんとは前から言わなきゃって思ってたんだ』

『俺の自分勝手な考えだから、怒っていいよ。でも、やっぱり別れなきゃいけない』

と返信した。
最低な彼氏だな、俺・・・。
俺がそう送って一瞬で既読がついてから、音桜が返信してくるまでには少し時間があった。

『そうだったんだ・・・気付かなくてごめんね』

気付くはずがない。
前から考えてたのは本当だけど、俺は別れたくないんだから。
ずっと、最後に話した昨日まで。
ずっとずっと音桜に本物の愛をささやいてきたつもりだ。

『わかった。別れよう。今までありがとう』

すごく短い言葉たちが、胸を締め付ける。
いつも『碧くんのことが大好きだよ』と言ってくれる可愛い彼女は、メッセージであまり短い言葉を使おうとしない。
彼女曰く、『思いの丈がちゃんと伝わってるか不安になっちゃから』だそう。
だから、彼女が短い言葉を使うときは、動揺している時。
それか・・・もう、冷められちゃったか。
『好きだから誤解されたくない』という気持ちが消え失せてしまったのかな。
音桜からのメッセージが来たのを確認した後、彼女とのトークをピン止め解除し、『非表示』にした。

はぁ・・・だるい。
『叶うはずもない』と鼻で笑われたっておかしくない夢を、『碧くんたちなら叶えられるよ!』と笑顔で応援してくれる彼女だ。
ファンの1人もついて来なかった時から、ずっと背中を押し続けてくれた彼女だ。
Frooveのメンバーだと言っても過言でないくらいに、お世話になった。
なのに、メジャーデビューが決定した途端捨てるなんて・・・。
ほんとに、自分勝手で最悪な彼氏だな。