世界で一番、近くて遠い推しとの恋


初途とのやりとりが終わった時、タイミングを見計らったかのようにまた通知が来る。
今度はFrooveの可愛い担当メンバーの天羽(あまう)澪空(れいく)からだ。
そしてまた、

『あおりん先生となんかあった~?』

と。
ちなみに澪くんはメンバーの呼び方に癖があり、碧くんのことは『あおりん先生』と呼んでいる。
・・・また同じことを訊かれてしまった。
いちおう『どうしたの?』と訊いてみると、予想どうり

『なんかね、あおりん先生がねおちゃんの名前呼びながら泣いててさ~。謝ったりとかもしてるから喧嘩でもしたかな~って』

碧くん、謝ってたの・・・?
なんで。
振ったのに。
振ったのに、なんで私の名前を呼んで謝って・・・泣いてるの。
泣きたいのは私なのに・・・なんで、碧くんも泣いてるの。
そんなの、期待しちゃうのに。

『ううん、碧くんが私のこと怒らせたって勘違いしてるみたい。私は怒ってないから気にしないで欲しいんだけどなぁ』

とまた大嘘。
すると澪くんも信じてくれ、『りかい!』という可愛らしいスタンプを送ってきた。
ほんとに、みんなに愛されてるリーダーなんだなぁ。
でも、このままいくと他のメンバーからも・・・。
と考えていると、大当たり。

『音桜、今大丈夫?』

確認からい入ってきた気の利くこの人は、Frooveの面白担当・神代(こうじろ)璃翠(りすい)
口の悪さから近寄りがたく感じられるが、案外お馬鹿さんなメンバーだ。

『大丈夫だよ。なんかあった?』

用件なんてわかってるのに、自然にそう訊く。

『いやー、これ言っていいのか分かんないんだけどさぁ』

その一言から予想が当たっていたことに呆れ、やっぱり璃翠くんはメンバー想いなんだなぁ、と心が温まる。
ファンのことも大事にしてくれるけど、Frooveのメンバーはお互いのことが大好きなのだ。
お互いのことを知り尽くしていて、見ててほっこりする優しいグループ。

『碧がさ、めずらしく泣いてたんだよ』

やっぱり・・・。
ほら、碧くん。
泣かないでよ。
なんの涙なのか分からないけど・・・私まで悲しくなってくる。
『私と別れたことを後悔してくれてるのかも』なんて、ありえないことを考えては虚しくなっちゃんだから。
私のことで・・・泣かないでよ。

『碧くんが言ったことで私が傷ついたと思っちゃったみたい。私は気にしてないんだけどね』

あれ・・・。
もう付き合ってないのに。
私、振られたのに。
言っちゃえばいいのに。
なんで。
なんで、『碧くんのために』嘘をついてるんだろう。

『そうなの?ならいいけど。夜にごめん、おやすみ』

やっぱり璃翠くんは優しいなぁ。
でも、碧くんを好きになって後悔したことはないのだ。
そして璃翠くんとのやりとりが終わってすぐ。

ヴー、ヴー、ヴー、ヴー

私のスマホが、震え始めた。