世界で一番、近くて遠い推しとの恋

いつもと変わらない夜だったはずだ。
いつも通りご飯を食べて、お風呂に入って、スマホで推しを確認して・・・。
すべてが狂ったのは、スマホに来た1件の通知。
彼氏からだった。

私は桃生(ものう)音桜(ねおう)
売れないアイドルグループ・Froove(フルーブ)のファンであり・・・。
メンバーの甘水(うすい)碧李(あおり)と付き合っている。
ずっと努力をしてきたFrooveをずっと追いかけてきた私はメンバーとも仲が良く、一緒にご飯を食べたりする。
そしてFooveはついに今日、3か月後にメジャーデビューすることを発表した。
もしかしてご飯のお誘いとかかな、とワクワクしながらメッセージを開く。
でも、今日の碧くんからのメッセージはいつもの優しいものではなかった。

『突然ごめん。別れよう』

碧くんからの、別れのメッセージだった。

『え?急にどうしたの?』

驚いてそう返すと、送ったと同時に既読がつき、10秒くらい間があいて2つ返信が来た。

『ほんとは前から言わなきゃって思ってたんだ』

『俺の自分勝手な考えだから、怒っていいよ。でも、やっぱり別れなきゃいけない』

・・・前から?
前から、別れたいなぁって思ってたってこと?
それなのに・・・昨日まであんなに優しくしてくれたの?

『そうだったんだ・・・気付かなくてごめんね』

『わかった。別れよう。今までありがとう』

これからデビュー前で忙しいだろう。
駄々をこねて彼を困らせては駄目だ。
でも・・・ほんとは、別れたくないなぁ。

『ほんとにごめんね。ありがとう』

すぐに返信が来て、感謝を伝えられたことにまた胸が痛む。
あぁ、私の一方的な想いだったんだ。
結局私は、碧くんの特別な存在にはなれなかったんだなぁ。
そのあと2件だけ、碧くんにメッセージを送ったけど、そのメッセージに既読がつくことはなかった。