「好きだよ、美咲」
囁きと共に、首筋にあった唇がより下へと降りていく。
ブラウスのボタンに拓巳の指がかかった、その時。
──私はなぜか、思い出してしまった。
絶対に思い出したくなんかないはずの、あのセリフを。
『だって里中さん、楽しそうに見えないから』
「っ……」
どうしてこんな時に思い出してしまうのか。
よりにもよって一番思い出したくない、思い出しちゃいけない時に。
だけどその声は、まるでこうなることがわかってたかのように、頭の中で響いている。
なぜと思いながらも、体の熱が幻のように消え去っていった。
急に、今している行為が恥ずかしいことのように思えてくる。
それを認識した瞬間に、私の腕は、拓巳の腕を掴んでいた。
「……美咲?」
「ゴ、ゴメン。なんか今日は……酔いすぎたかも……」
嘘だ。気分が悪いほど酔ってなんかない。言い訳を口にしながら、私は敗北感にも似た苦い思いを味わっていた。
「……ゴメンね」
拓巳の腕をすり抜けながら、私は押し寄せる後ろ暗さに唇を噛んだ……。

