沈黙が流れ、木々が風に煽られる音だけが響いていた。
湊は私に目も向けず、ただ寺田先輩のことだけを見つめていた。
「おーい、いずみん!生きてる~?」
ひらひらと私の顔の前で鬱陶しく手を仰ぐ。言葉を失っているのは私だけでなく、湊も同然だった。そして、湊の拳が、わずかに震えていた。頭が真っ白な私は、無言のまま寺田先輩の手首をつかみその場を離れた。
「あの子がいずみんの好きな子か~!かっこいい子だね!」
馴れ馴れしい呼び名と、ヘラヘラしたその表情に血の気が沸く。眉間にしわを寄せて、低いトーンで寺田先輩に問い詰めた。
「先輩、なんであんなことしたんですか」
階段裏で私と寺田先輩は見つめあった。廊下に響く、笑い声にすら癇に障り、握る拳により力がこもった。
「謝る必要ないからだよ」
震えるほど力んでいた拳がほんの少しだけ、力が抜けた気がした。けれど、そういうことじゃないの。ただ罪滅ぼしをして、湊に嫌われたくない…あわよくば好きになってほしいと思っているだけ。
「謝って、誤解を解いてその後どうしたいの?」
「どう、したい……」
寺田先輩の質問は鋭く私の心臓に突き刺さった。まさに、図星を突かれた感覚だった。
「謝ったところで、彼が高橋に告白をされた事実は変わらない上、いずみんが嘘をついた事実だけが残る。メリットなんか一ミリもないよ」
ごもっともだった。寺田先輩の言葉が何よりも私を冷静にさせた。先輩を見つめていた視線は、徐々に落ちていき自暴自棄になってる自分を哀れに思った。
「だから、嘘を事実に変えてあげただけ」
ね?と首を少しだけ傾げて、先輩は私の頭に手を乗せた。これ以上先輩のことを咎めることなんてできなかった。彼なりの優しさで、哀れな後輩に同情をしてくれたのだ。
「ありがとうございます…」
ありがとう、という言葉が今の状況に合っているのかはわからなかったが、どんな形であれ、先輩の優しさが暖かかった。
「じゃあ、あとは湊と仲直りして後始末をしてきます」
「うんうん!がんばれ!」
「今日で最初で最後になりましたが、色々とありがとうございました」
次は軽く会釈をして、先輩に笑顔を向けた。こんな有名人と関わる日が来るなんて、ましては、キスをする日が来るなんて思いもしなかったけれどいつしかは、笑い話になるのだろうと思った。
「え?何言ってるの?」
……………………は?
私の笑顔は、一瞬で青ざめた。冗談を言っているのだと思ったけれど、この猛毒男の表情には一切ハイライトがなかった。
「僕たちは、これからもよろしくね?……でしょ?」
この人の言っていることが、全く理解できなかった。そうだ…すっかり忘れていた。この先輩、ヤバいやつだった。
「自分で始めた物語はしっかし自分で“後始末”しようね」
湊は私に目も向けず、ただ寺田先輩のことだけを見つめていた。
「おーい、いずみん!生きてる~?」
ひらひらと私の顔の前で鬱陶しく手を仰ぐ。言葉を失っているのは私だけでなく、湊も同然だった。そして、湊の拳が、わずかに震えていた。頭が真っ白な私は、無言のまま寺田先輩の手首をつかみその場を離れた。
「あの子がいずみんの好きな子か~!かっこいい子だね!」
馴れ馴れしい呼び名と、ヘラヘラしたその表情に血の気が沸く。眉間にしわを寄せて、低いトーンで寺田先輩に問い詰めた。
「先輩、なんであんなことしたんですか」
階段裏で私と寺田先輩は見つめあった。廊下に響く、笑い声にすら癇に障り、握る拳により力がこもった。
「謝る必要ないからだよ」
震えるほど力んでいた拳がほんの少しだけ、力が抜けた気がした。けれど、そういうことじゃないの。ただ罪滅ぼしをして、湊に嫌われたくない…あわよくば好きになってほしいと思っているだけ。
「謝って、誤解を解いてその後どうしたいの?」
「どう、したい……」
寺田先輩の質問は鋭く私の心臓に突き刺さった。まさに、図星を突かれた感覚だった。
「謝ったところで、彼が高橋に告白をされた事実は変わらない上、いずみんが嘘をついた事実だけが残る。メリットなんか一ミリもないよ」
ごもっともだった。寺田先輩の言葉が何よりも私を冷静にさせた。先輩を見つめていた視線は、徐々に落ちていき自暴自棄になってる自分を哀れに思った。
「だから、嘘を事実に変えてあげただけ」
ね?と首を少しだけ傾げて、先輩は私の頭に手を乗せた。これ以上先輩のことを咎めることなんてできなかった。彼なりの優しさで、哀れな後輩に同情をしてくれたのだ。
「ありがとうございます…」
ありがとう、という言葉が今の状況に合っているのかはわからなかったが、どんな形であれ、先輩の優しさが暖かかった。
「じゃあ、あとは湊と仲直りして後始末をしてきます」
「うんうん!がんばれ!」
「今日で最初で最後になりましたが、色々とありがとうございました」
次は軽く会釈をして、先輩に笑顔を向けた。こんな有名人と関わる日が来るなんて、ましては、キスをする日が来るなんて思いもしなかったけれどいつしかは、笑い話になるのだろうと思った。
「え?何言ってるの?」
……………………は?
私の笑顔は、一瞬で青ざめた。冗談を言っているのだと思ったけれど、この猛毒男の表情には一切ハイライトがなかった。
「僕たちは、これからもよろしくね?……でしょ?」
この人の言っていることが、全く理解できなかった。そうだ…すっかり忘れていた。この先輩、ヤバいやつだった。
「自分で始めた物語はしっかし自分で“後始末”しようね」
