〜摂食障害という名の、透明な檻に閉じ込められて~

教室の窓から差し込むうららかな光の中、女子たちの黄色い歓声が響いていた。

その中心にいるのは、いつもクラスを明るく引っ張る一軍トップの少女、楓だ。

「ねえねえ聞いて! 今度、推しの握手会に行くんだ〜!」

仲良しの陽葵ひまり楓かえでが、両手を合わせて目を輝かせながら声を弾ませた。

その言葉に、楓はパッと顔を輝かせ、身を乗り出す。

「えーっ、いいなー! 私も行きたーい!」

「じゃあ、一緒に行こうよ!!」

「うん、一緒に行こう!」

弾むような約束。

「やったぁ!  楓《かえで》と一緒なら待ち時間も絶対
楽しいよ!」

「私も! 2人で並んで、推しにびっくりさせちゃおうね!」

「うん! チケット、なんとか2人分確保できるように頑張ってみるから!」

「本当に? ありがとう陽葵! 楽しみすぎて今から心臓がバクバクしちゃう!」

家に帰ってからも、楓の頭の中は推しのことでいっぱいだった。

どんな服を着ていこうかな……。

せっかく推しに会えるんだもん、世界で一番可愛いって思われたいな

陽葵もすごくおしゃれしてくるだろうし、私も負けていられないよね。

並んだときに『あのニ人、可愛いな』って推しの目に留まりたい。

絶対に、最高の私で行くんだから!

それからの楓は、持ち前の行動力をフルに発揮した。

雑誌をめくっては小学生向けのメイクを研究し、お小遣いをやりくりしてはおしゃれな服を探した。

ライブ映像を観戦するときも、画面の中の推しに見つめられているような気がして、自然と背筋が伸びる。推しに会うための努力は、楓にとって純粋な幸せそのものだった。