事ノ母


1914.7.28.

【いろはにほへと ちりぬるを】

花は美しく咲くけれど、いつか散ってしまう。

いろは唄は変わりゆくこの世界を

美しくも儚く書き綴ったものである。

縁台に座り、残楼(ざんろう)の並木を見つめていました。

耳を澄ませば、

(うぐいす)が麗しくもないているではありませんか。

息を吸えば、

花香が鼻を掠め、

当たりを見れば、

死屍累々(ししるいるい)たる惨状のように、

花筵(はなむしろ)が踏み荒らされているのです。

そして、

この桜さえも、

いつの日か何処かへ姿を消してしまう。

桜の枝に鶯の小鳥が止まっていました。

母鳥を不格好な鳴き声で呼んでいるのです。

その応えは決して無いと言うのに。


終焉ノ死。
《小鳥は子取る。》