第3話 – 12ページ目:お台場の海辺で (夕暮れ)
夕暮れ – お台場の海辺
太陽が、ゆっくりと海の向こうへ沈んでいく。
空はオレンジとピンクの間に浮かんでいた――誰かが空いっぱいに絵の具をまき散らしたかのように。
波は穏やかなリズムで打ち寄せては引いていく。決して途切れることのない、呼吸のように。
ミヤとイロは、並んで座っていた。
靴は脇に置き、足は冷たい砂の中に半分埋まっている。
焦るものは、何もなかった。
イロが遠くを見つめた。
「人の人生ってさ、葉っぱみたいだと思う。」
ミヤは少しだけ首を傾げた。
「葉っぱ…?」
イロは指先で砂に線を描いた。
「春に生まれて、夏に伸びて、秋に色が変わって、冬に落ちる。」
間を置く。
「で、また春が来る。」
ミヤは海岸沿いの木々を見た。葉は夏の風に優しく揺れている。
「じゃあ…今は?」
イロは、かすかに微笑んだ。
「真ん中。夏のど真ん中。」
風が海から吹き寄せ、ミヤの髪の数筋をさらっていく。
「まだ…変わる前?」
イロは、少しだけ視線を落とした。
「うん。まだ緑。」
短い沈黙。
重くはない。ただ、静かだ。
ミヤは、指先の砂を見つめた。
「イロは…秋、嫌い?」
イロは一瞬、間を置いた。
「嫌いじゃない。でも…なる時は選べない。」
ミヤは、静かに言った。
「…そうなんだ。」
それから、もっと静かな声で。
「でも私は待ってる。どんな季節でも。」
イロは彼女を見た。
今度は、その視線は短くはなかった。
温かかった。かつてないほど、リアルに。
「…ありがとう。」
空が、少しずつ暗くなる。
海岸の灯りが、ひとつまたひとつと点き始めた。
ミヤが立ち上がる。砂が、彼女の足から静かにこぼれた。
「夏祭り…ちゃんと来てね。」
イロも立ち上がる。
「うん。」
並んで歩き出す。
彼らの背後で、海は静かだった。
そして、夏はゆっくりと、夜へと変わっていった。
夕暮れ – お台場の海辺
太陽が、ゆっくりと海の向こうへ沈んでいく。
空はオレンジとピンクの間に浮かんでいた――誰かが空いっぱいに絵の具をまき散らしたかのように。
波は穏やかなリズムで打ち寄せては引いていく。決して途切れることのない、呼吸のように。
ミヤとイロは、並んで座っていた。
靴は脇に置き、足は冷たい砂の中に半分埋まっている。
焦るものは、何もなかった。
イロが遠くを見つめた。
「人の人生ってさ、葉っぱみたいだと思う。」
ミヤは少しだけ首を傾げた。
「葉っぱ…?」
イロは指先で砂に線を描いた。
「春に生まれて、夏に伸びて、秋に色が変わって、冬に落ちる。」
間を置く。
「で、また春が来る。」
ミヤは海岸沿いの木々を見た。葉は夏の風に優しく揺れている。
「じゃあ…今は?」
イロは、かすかに微笑んだ。
「真ん中。夏のど真ん中。」
風が海から吹き寄せ、ミヤの髪の数筋をさらっていく。
「まだ…変わる前?」
イロは、少しだけ視線を落とした。
「うん。まだ緑。」
短い沈黙。
重くはない。ただ、静かだ。
ミヤは、指先の砂を見つめた。
「イロは…秋、嫌い?」
イロは一瞬、間を置いた。
「嫌いじゃない。でも…なる時は選べない。」
ミヤは、静かに言った。
「…そうなんだ。」
それから、もっと静かな声で。
「でも私は待ってる。どんな季節でも。」
イロは彼女を見た。
今度は、その視線は短くはなかった。
温かかった。かつてないほど、リアルに。
「…ありがとう。」
空が、少しずつ暗くなる。
海岸の灯りが、ひとつまたひとつと点き始めた。
ミヤが立ち上がる。砂が、彼女の足から静かにこぼれた。
「夏祭り…ちゃんと来てね。」
イロも立ち上がる。
「うん。」
並んで歩き出す。
彼らの背後で、海は静かだった。
そして、夏はゆっくりと、夜へと変わっていった。
