夜の風景

第3話 – 11ページ目:焼け付く街の夏の日


午後 – 渋谷駅付近


空気は焦げつくように暑かった。

陽の光がアスファルトの上で揺らめき、街の喧騒は遠くの波のように単調に響いていた。


四人は、並んで歩いていた。

手には色とりどりのアイスクリーム。それは静かに、溶け始めている。


ユカが、笑いながら言った。


「この暑さ、これしか勝たんね。」


ハナが嬉しそうに首をかしげ、アイスを舐めた。


「夏って最高!理由?アイスあるから!」


リナは、青いアイスクリームから目を離さず、静かに言った。


「この色、きれい。でも味は想像つかないね。」


ハナが笑った。


「食べれば分かるってば!」


彼女たちの笑い声が、通りに広がる。


ミヤが、少しだけ先に立ち止まった。手にした抹茶のアイスが、光を受けて輝いていた。


「私はこれ。抹茶。」


ユカが首を傾げる。


「一口だけ!」


ミヤはすぐにアイスを引っ込めた。


「ダメ。自分のあるでしょ。」


しかし、その言葉が終わる前に――


ハナが後ろから小さくかじり取り、走り出した。


「いただきましたー!」


ミヤは、一瞬言葉を失った。


「ちょっと、ハナ!」


リナが、淡々とした声で言った。


「追いかけないと、全部いくよ。」


ミヤとユカは、同時に走り出した。


夏は、途切れることのない笑い声の中に溶けていった。



駅の近く – 数分後


三人は、息を切らせていた。


ハナが、笑いながら言った。


「まさか走るとは思わなかった!でも美味しかった!」


ミヤは、半分溶けたアイスクリームを見つめた。


「もう半分しかない…」


ユカが、微笑みながら言った。


「はい、これでチャラ!」


ハナの目が、いたずらっぽく輝いた。


「次はユカのチョコアイスね!」


ユカは、慌ててアイスを背中に隠した。


「絶対ダメ!」


また、笑い声が戻ってきた。



夜 – ミヤの部屋


窓は開いていて、夏の暖かい風がカーテンを静かに揺らしていた。


ミヤはベッドの上に横たわっている。外からは、蝉の声が聞こえていた。


ノートを開く。


「今日、焼けつくような夏の街で、笑い声は軽やかだった。

走るハナ、文句を言いながらも笑っているユカ、

そして静かにそれを見守るリナ…

気づいた。たぶん、人生はこういう瞬間のことなんだ。

大きな何かじゃない。ただ、これだけのこと。」


ノートを閉じる。


小さな微笑みを浮かべた。


灯りが、静かに消えた。