おしえて、君のぜんぶ

『瑞生side』




春の風がまだ少し冷たい朝だった




私立でもない、大きな公立中学




七クラスまである新入生の列は、人で埋まっている




校門の前で立ち止まった私 天音 瑞生 は、手元のクラス表を見直した




「……1組」




隣で、制服のネクタイを緩く整えながら




双子のお兄ちゃん 天音 翠 が笑う




「俺5組。離れたな」




「まあ七クラスあるしね」




瑞生はそう返しながらも、少しだけ周囲を見回した




――いるわけ、ないか




保育園の頃、毎日一緒だったふたり




けれど小学校に上がる時に引っ越して、それきり




六年なんて、長すぎる




もう顔だって変わってるはずだ




「じゃ、あとでな」




「うん」




翠が人混みの中へ消えていく




瑞生も1組へ向かおうとして――ふと、廊下の先で足を止めた




窓際




男子が笑いながら誰かと話している




背、高くなったな




少し伸びた髪




変わらない笑い方




「……湊斗、くん?」




思わず小さく呟く




その声は届かない




隣には、ひとりの女子がいた




黒髪を肩で揺らしながら、静かに笑っている