庭でサルビアが笑ってる




「サルビアを目印に?」


「ええ。お父さんが家の場所を忘れても帰って来られるように」



 るつちゃんは昔を懐かしむように目を細めた。


 その視線の先には大きな白い建物がある。


 きっとあれが病院だ。



「あそこにお父さんが入院してるんだね」


「ええ……」



 るつちゃんの声は暗い。


 私はるつちゃんの手をにぎって、大股で歩き始めた。



「ここまで来たんだし、絶対会おう」


「……そう、そうね」



 るつちゃんの目に光が戻る。


 私は私で、かける言葉はあれでよかったんだろうかと不安になってしまった。


 簡単に「絶対大丈夫だよ」なんて言えないし。


 でもここまで来ておいて帰るのも違う。


 なにがあるかは全然わからないけど、もう覚悟を決めていくしかない。


 ……でも「絶対会おう」は言いすぎだったかな。


 面会謝絶とかあるかもしれないし。