庭でサルビアが笑ってる




 私たちはお姉さんにお礼を言うと、「お気をつけて」と海に潜って姿を消してしまった。


 ……きっともう、会うことはないだろう。



「璢音さん、行きましょう」


「……そうだね、行こう」



 名残惜しそうな顔をしていたけど、るつちゃんは私の手を引いてそう言った。


 うん。るつちゃんはお父さんに会って、私は目を覚さなくちゃ。



「この町の先にあるの?」


「ええ。この町を北に向かえばすぐよ」



 るつちゃんの顔は明るい。もうすぐでお父さんに会えるんだからそりゃそうか。


 私は大きな街に着いてからが本番だ。上手いこと見つかるよう祈っておこう。


 私がひっそりと祈っているうちに、るつちゃんの顔はどんどんと曇っていった。



「るつちゃん……?」


「璢音さん……なんだかおかしくない?」



 るつちゃんに言われて、私は初めてこの町の違和感に気づいた。