私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

「ただいま」

いつものように、ドアを開け、
玄関に入る。

しかし、いつもとは違い、料理の匂いがしない。

「悠真?」

嫌な予感に襲われる。

いつもなら、「おかえり」と声がする。

それなのに、今日は静まり返っている。

私は怖くなり、玄関に並んでいる靴を見る。

「悠真!」

慌てて、外へ飛び出す。

玄関に、悠真の靴がなかった。

悠真は普段から、一人でどこかへいくようなタイプじゃない。

とりあえず私は、悠真が行きそうな、
近くの公園や駅、スーパーを回った。

でも、どこにも悠真の姿はない。

私が悠真の話を聞かなかったから?

それとも、私のことが嫌いになったのかな?

「はぁはぁ……」

呼吸が苦しい。

気がつくと、私は雨でずぶ濡れになりながら、
悠真と出会った場所に来ていた。

あの日、悠真と出会ってから、
たくさんのことがあった。

大変なこともあったけど、
楽しい思い出もたくさんできた。

それなのに、悠真はこんな簡単に、
姿を消してしまうだなんて。

一気に何かが噛み上げてくる。

その時だった。

「千紘!」

聞き覚えのある声。

振り返ると、必死にこちらへ向かって走ってきている、悠真の姿があった。