私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

会社に着くと、

「おはようございます、先輩!」

元気な結奈ちゃんの声が聞こえた。

「おはよう」

そう返すと、結奈ちゃんは不思議そうに首を傾げた。

「先輩、何かありました? それとも体調悪いとか……」

「え?」

私はいつも通り返事をしたつもりだった。

でも、結奈ちゃんには、
私の小さな変化が伝わってしまったらしい。

「何もないよ?」

そう笑ってみせる。

すると結奈ちゃんは、少しだけ困ったように笑った。

「そうですか……。なんか悩んでるように見えたので」

悩んでる、か……

図星だった。

「大丈夫。今日も頑張ろう」

私はいつもより少しだけ明るい声を出した。

「はい!」

結奈ちゃんはガッツポーズをしながら笑う。

その笑顔を見ていると、
張りつめていた心が少しだけ軽くなった気がした。

私は席に座り、深く息を吐く。

考えるのは仕事が終わってから。

そう自分に言い聞かせる。

パソコンの電源を入れ、資料を開く。

キーボードを叩く音だけが、
静かなオフィスに響いていた。

私は心の中のモヤモヤを振り払うように、
目の前の仕事へ集中した。