私はどうするか悩んだ末、
こんなやつを置いておく訳にもいかず、
とりあえず家まで連れてきた。
不審者を連れてきてしまって、
大丈夫だったのだろうか?
しかし、美緒の話を聞いてから、
すぐに現れたということは、幻覚か夢である、
可能性が高い。
そして、このイケメンを放置しておくことはできない。
家の中に入る。
男は不思議そうに周りをキョロキョロみているので、腕を引っ張り、中に入れる。
靴を脱がせて、とりあえず風呂場へ連れて行く。
「お風呂に入って」
そう言ってタオルを渡す。
しかし、男はただタオルを持って突っ立っている。
「どうしたの?」
私が尋ねると、
「これはなんだ?」
と、信じられない質問が帰ってきた。
風呂の入り方を知らないだと……
「まず、服を脱いで、ここの中に入る」
「ふむ」
「それで、ここで温度を調整して、こっちで、シャワーになるからこれで使って」
男は必死に理解しようとしている。
「これで、髪を洗って、こっちで体を洗う」
「ふむ」
「そして、タオルでええ!?」
私は目の前の光景に、釘付けになってしまった。
男がすでに、服を脱いでいた。
でも、目が離せない。
顔は整っていて、体も程よい筋肉の付き具合。
まぁ、下に関してはノーコメントだが。
よだれが垂れそうになるのを耐え、
男を風呂場に押し込む。
心配だが、物覚えも早そうだ。
しっかし、この服は要らないかな……
そうは思いつつも、一応洗濯してあげることにした。
服は……
「はぁ」
そう言えば、
だいぶ前に別れた元彼の服があったはずだ。
引き出しを漁り、いくつか服を取り出す。
そして、脱衣所の前に置いた瞬間、ドアが開いた。
私の目の前には、
思わず視線に困るものがあった。
「っ……!?」
私は急いで服を置き、
勢いよくドアを閉めた。
こいつは、何を考えているんだ。
服を着終えた、男が出てくる。
微妙に髪が長いため、ドライヤーを使って髪を、
乾かしてあげた。
最初はドライヤーの音に驚いていたものの、
すぐに乾くのが感動だったらしく、
ドライヤーをしばらく見つめていた。
そして、やっとリビングへと連れてきた。
私は、とくにこだわりが無いため、
シンプルな内装になっている。
男にソファに座るよう促す。
ソファも気に入ったようだ。
私は、彼の話を聞いてみることにした。
すると驚いたことに、
美緒が話していた人物と、
合致する点があまりにも多かった。
木梨軽皇子。
伊予国へ流された皇子。
そして――
愛する妹を失った男。
彼が私に執着する理由。
それは、
私が“軽大娘皇女にそっくり”だから、らしい。
けれど、当然ながら、
私にはそんな記憶は存在しない。
偶然なのか。
それとも――。
胸の奥が、
妙にざわついた。

