「気づけば、もう二十六歳だもんねぇ」
美緒が日本酒を揺らしながら、ぽつりと言う。
「やめて。その話すると死にたくなる」
「いや、でも本当に早くない?この前まで大学生だったじゃん」
「分かる……」
ついこの間まで、“東京に出てきたキラキラした女の子”だったはずなのに。
気づけば毎日、
満員電車に押し潰され、
上司に怒鳴られ、
コンビニ飯を食べながら生きている。
同級生は結婚する人も増えてきた。
父親や母親になった同級生だっている。
最近は、親から心配されることも増えた。
それなのに私は、男もいなければ、出会いもない。
このまま天涯孤独になんて……
私が人生に絶望しかけていた時、
「……ねぇ千紘」
「んー?」
「もしさ。全部投げ出せるなら、何したい?」
と、意味深な質問をされた。
「まず、ハゲを殴るでしょ〜」
「ぷっ、なにそれ」
「で、全国のいい男を漁りまくる!」
「いいですね〜」
美緒が求めていた答えは、
こういうのじゃない気がする。
でも、私より大人な美緒の考えてる事は、
分かんなかった。
「美緒は?」
「私はねぇ、全国の遺跡発掘とかしたいかも」
「なにそれ」
「うちらの地元にさ、比翼塚ってあるじゃん?」
「あ〜、あった気がする」
記憶は曖昧だが、適当に答える。
「あれってさ、歴史的にも結構有名な、お話の聖地なんだってさ〜」
「へ〜」
美緒は昔から、歴史が好きで、調べたり、
現地へ行ったりすることも多い。
「それでね、そのお話って言うのが結構、悲しくて……」
美緒は、長々とその物語について語り始めた。

