ドカ。
私は、紙の塊を床に置いた。
手をみると、徐々に回復していく。
手に血が巡っていくのを、感じる。
「温かい……」
そう、私が玄関で、
自分の温もりを感じている時だった。
「大丈夫か!?」
そう言って、慌てた様子で、
悠真が走ってきた。
「なにをしておるのだ?」
両手を見つめながら、微笑んでいる私を、
悠真は、とても不思議そうに見ている。
その顔を見て、我に帰る。
「あ!それ買ってきたの!」
買ってきたドリルたちを指差す。
「これはなんだ?」
「とりあえず、リビングに運んで」
私がそう言うと、悠真は軽々と、
ドリルたちを持っていった。
考えてみれば、悠真を連れて行けば良かったのだ。
でも、また変な発言をされても困るからな。
そんなことを考えながら、リビングへ向かう。
リビングの扉を開けると、悠真は全てのドリルを、
袋から取り出し、不思議そうにページをめくる。
とりあえず、ひらがなの読み方を、
教えればいいのかな?
私は、悠真の隣に座る。
「これは!」
そこには、ひらがな、カタカナの一覧表があった。
これがあれば、すぐにひらがなとカタカナは、
マスターできそうだ。
そこで、私は早速、表を使いながら、
悠真にひらがなから教えることにした。
「これは“あ”」
「あ」
「これは“い”」
「い」
悠真は驚くほど飲み込みが早かった。
一度聞いた音を、ほとんど間違えない。
「すご……」
思わず感心する。
すると悠真は、
少し誇らしそうに笑った。
「そなたの教え方が良いのだ」
……その言い方、ずるい。
イケメンにさ、言われたらさ、それはさ、反則やん?
胸のトキメキを強引に抑える。
「ふぅ……」
深呼吸をして、平常心に戻る。
とりあえず、こうやるのが一番だろう。
そう信じながら、五十音を一音ずつ、
悠真に教えていった。

