私が拾ったのは、千年前の皇子でした

私の名前は、高瀬 千紘。

東京の企業でOLとして、働いている。

毎日毎日、満員電車に揺られること30分。

会社に着くと、出勤ラッシュでエレベーターも満員。

仕事が始まると、
ひたすらパソコンに向かって文字を打ち込む。

上司からのパワハラ、セクハラも、
日常茶飯事。

仲のいい同僚もいるが、
どこか、無理している自分がいる。

今日も、上司から説教を受ける。

「君はやる気がたりないんだ!」

「すみません」

とりあえず謝る。

やる気ってなんだよ。

欠勤、遅刻なし。

ミスも少なくて、比較的仕事も出来るほうなのに。

お前のミスをカバーするのも、
こっちだというのを分かってんのか、ハゲオヤジ。

「昔の偉人ーー」

始まったよ、偉人の言葉を引用して、
それを私たちに押し付ける。

お前はできてねぇくせに、このハゲが!

恨みの分だけ、髪の毛が抜けんだよ。

そんな事を、毎日繰り返す。

私が愛媛で思い描いていた、生活とは、
かけ離れている。

いっそのこと、地元に帰ってみかんでも作ろうか。

そんな事を思いながら、帰宅ラッシュの、
満員電車に乗り込む。

そんなに押し込む?ってくらいぎゅーぎゅーだ。

目の前には、大きなおじ様の壁。

「こ、これは……」

臭いで意識が飛びそうになるのを、耐える。

そして、スマホを取りだし親友にメッセージを送る。

『限界。飲みに行こ』

送信。

『了解!いつもの居酒屋で』

すぐに返信が帰ってくる。

持つべきものは良き友である。

私は意識が遠くなるのを耐え、
自分の家の最寄り駅で降りる。

いつもの居酒屋は家から十分ほど。

本当にありがたい。

こうして私は、居酒屋のドアを開けた。
 
ガラガラ。

ドアを開けて、中に入る。

「いらっしゃいませ〜」

若い元気なアルバイトの男の子の声。

元気なことはいい事だ〜

「千紘、おつかれ〜」

カウンターに座り、こっちに手を振っているのは、
同郷の親友であり戦友の藤崎 美緒。

美緒とは小中高大と一緒。

大学が東京だったので、一緒に上京。

シェアハウスをしていた時期もある。

でも、就職した会社は別々。

今は定期的に、こうやって飲むくらいだ。

「それでハゲ課長がさ〜」

「あのハゲか」

女子二人。

日本酒を飲みながら、話をする。

私はひたすら愚痴を言う。

美緒は私より大人だから、いつも、
楽しそうに私の愚痴を聞いてくれる。

いつの間にか話は、ハゲの話から、
自分たちの年齢の話になっていた。