私はどうしても勾玉のことが気になり、
上野の国立博物館を訪れていた。
「すごいものばっかり……」
展示を一つひとつ眺めながら歩く。
古代の展示室へ足を踏み入れた瞬間、不思議な懐かしさが胸をよぎった。
どうしてだろう。
初めて来たはずなのに。
どこか、知っている場所のような気がする。
土器や土偶。
昔の人々が使っていた道具。
どれも見覚えはないはずなのに、自然と足が止まってしまう。
「これは……?」
一冊の古い書物が展示されていた。
びっしりと並ぶ古い文字。
「全然読めないや」
苦笑しながら通り過ぎようとした、その時だった。
『木梨軽皇子』
その文字だけが、なぜか目に飛び込んできた。
「木梨軽皇子……?」
知らないはずの名前。
なのに。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
懐かしい。
会いたい。
そんな気持ちが込み上げてきた。
私はその場を離れ、さらに奥へ進む。
そこには、美しい勾玉が展示されていた。
「綺麗……」
思わず呟く。
「綺麗ですよね。その勾玉」
突然、隣から声がした。
「きゃっ!」
驚いて一歩後ずさる。
「すみません。驚かせてしまいました」
声をかけてきたのは、一人の男性だった。
穏やかな笑顔を浮かべている。
「僕は、この博物館で学芸員をしています」
「勾玉をこんなに熱心に見てくださる方がいて、つい嬉しくなってしまって」
そう言って照れくさそうに笑うと、ポケットから携帯電話を取り出した。
「あっ」
思わず声が漏れる。
携帯電話には、私のストラップとよく似た勾玉が付いていた。
違うのは色だけ。
「色違いですね」
私もスマホを取り出して見せる。
男性は嬉しそうに笑った。
「本当だ」
「偶然ですね。」
それから彼は、展示されている勾玉の歴史や意味を楽しそうに話してくれた。
正直、内容は半分も頭に入ってこなかった。
それよりも。
一生懸命話すその横顔が、どうしても気になってしまう。
どこかで見たことがあるような。
初めて会ったはずなのに。
「そういえば」
私はふと口を開いた。
「ガラケーなんですね。」
「ああ」
男性は少し照れ笑いを浮かべる。
「スマホって便利そうなんですけど……どうも使いこなせる気がしなくて」
頭をかく仕草が、なんだか可笑しくて思わず笑ってしまった。
でも。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥が、少しだけ痛んだ。
私は気づけば、自然と言葉を口にしていた。
「……あの」
男性は不思議そうにこちらを見る。
「私たち」
少しだけ息を吸う。
「どこかで、お会いしたことありませんか?」
男性は驚いたように目を丸くした。
そして少しだけ困ったように笑う。
「僕も……同じことを、聞こうと思っていました」
上野の国立博物館を訪れていた。
「すごいものばっかり……」
展示を一つひとつ眺めながら歩く。
古代の展示室へ足を踏み入れた瞬間、不思議な懐かしさが胸をよぎった。
どうしてだろう。
初めて来たはずなのに。
どこか、知っている場所のような気がする。
土器や土偶。
昔の人々が使っていた道具。
どれも見覚えはないはずなのに、自然と足が止まってしまう。
「これは……?」
一冊の古い書物が展示されていた。
びっしりと並ぶ古い文字。
「全然読めないや」
苦笑しながら通り過ぎようとした、その時だった。
『木梨軽皇子』
その文字だけが、なぜか目に飛び込んできた。
「木梨軽皇子……?」
知らないはずの名前。
なのに。
胸の奥が、ぎゅっと締めつけられる。
懐かしい。
会いたい。
そんな気持ちが込み上げてきた。
私はその場を離れ、さらに奥へ進む。
そこには、美しい勾玉が展示されていた。
「綺麗……」
思わず呟く。
「綺麗ですよね。その勾玉」
突然、隣から声がした。
「きゃっ!」
驚いて一歩後ずさる。
「すみません。驚かせてしまいました」
声をかけてきたのは、一人の男性だった。
穏やかな笑顔を浮かべている。
「僕は、この博物館で学芸員をしています」
「勾玉をこんなに熱心に見てくださる方がいて、つい嬉しくなってしまって」
そう言って照れくさそうに笑うと、ポケットから携帯電話を取り出した。
「あっ」
思わず声が漏れる。
携帯電話には、私のストラップとよく似た勾玉が付いていた。
違うのは色だけ。
「色違いですね」
私もスマホを取り出して見せる。
男性は嬉しそうに笑った。
「本当だ」
「偶然ですね。」
それから彼は、展示されている勾玉の歴史や意味を楽しそうに話してくれた。
正直、内容は半分も頭に入ってこなかった。
それよりも。
一生懸命話すその横顔が、どうしても気になってしまう。
どこかで見たことがあるような。
初めて会ったはずなのに。
「そういえば」
私はふと口を開いた。
「ガラケーなんですね。」
「ああ」
男性は少し照れ笑いを浮かべる。
「スマホって便利そうなんですけど……どうも使いこなせる気がしなくて」
頭をかく仕草が、なんだか可笑しくて思わず笑ってしまった。
でも。
その笑顔を見た瞬間。
胸の奥が、少しだけ痛んだ。
私は気づけば、自然と言葉を口にしていた。
「……あの」
男性は不思議そうにこちらを見る。
「私たち」
少しだけ息を吸う。
「どこかで、お会いしたことありませんか?」
男性は驚いたように目を丸くした。
そして少しだけ困ったように笑う。
「僕も……同じことを、聞こうと思っていました」

