去年の大晦日、実家へ帰った日のこと。
なぜか私は、一ノ瀬部長と一緒に『軽之神社』で倒れていたらしい。
記憶は曖昧だった。
でも、目を覚ました私は部長に向かって、
「恋人のふりをしてください!」
と、半ば強引にお願いした。
部長は驚きながらも、意外なほどあっさり了承してくれた。
そのまま二人で実家へ向かうと、家族は部長をすっかり気に入ってしまい、結婚の話まで持ち出す始末だった。
そうして私たちは、お正月を実家で過ごし、東京へ戻ってきた。
家へ帰った時、何かが足りないような気がした。
胸の奥にぽっかり穴が空いたような、そんな違和感。
でも、その正体はわからない。
気のせいだろう。
私はそう思うことにした。
ピピピピーッ。
目覚まし時計が鳴る。
「会社行きたくねぇよぉ……」
小さくぼやきながらアラームを止め、いつものように着替えを始める。
寝室を出て、何気なくキッチンへ目を向けた。
「……」
誰もいない。
当たり前なのに、なぜか少し寂しかった。
「お腹すいたなぁ」
前までは朝ご飯なんて食べなくても平気だったのに、最近は朝から空腹を感じる。
なんでだろう。
まぁいいや。
今日は仕事始めだ。
「よし、気合い入れていこう」
靴を履き、玄関のドアを開ける。
「行ってきます」
返事なんて返ってくるはずないのに。
なぜか、その言葉が自然と口をついて出た。
新年最初の満員電車は、相変わらず息苦しい。
いつもの駅で降り、会社へ向かう。
自分のデスクに着いた瞬間だった。
「おはようございます、先輩。」
結奈ちゃんが、意味ありげな笑みを浮かべながら声をかけてきた。
……嫌な予感しかしない。
「先輩って、一ノ瀬部長と付き合ってたんですね。」
「えっ!? ち、違うよ!」
思わず大きな声が出る。
「だって、目撃者もいたし、部長も否定してませんでしたよ?」
「本当に?」
「『お正月は先輩と一緒だったんですか?』って聞いたら、『ああ』って普通に答えてました」
「部長ぉ……」
なんでそんな誤解されるような返事をするの。
私は頭を抱えた。
「まぁ、そのあと『彼氏のふりを頼まれただけだ』って説明してましたけど」
「よかった……」
胸を撫で下ろす。
すると結奈ちゃんは腕を組み、ニヤリと笑った。
「でも私は、まだ怪しいと思ってるんですよねぇ」
「もういいってば!」
私は慌ててパソコンの電源を入れる。
「ほら、仕事するよ!」
「はーい」
結奈ちゃんは口を尖らせながらも、自分の席へ戻っていった。
私は画面を見つめる。
それでも、心のどこかに残る、この喪失感だけは消えなかった。
なぜか私は、一ノ瀬部長と一緒に『軽之神社』で倒れていたらしい。
記憶は曖昧だった。
でも、目を覚ました私は部長に向かって、
「恋人のふりをしてください!」
と、半ば強引にお願いした。
部長は驚きながらも、意外なほどあっさり了承してくれた。
そのまま二人で実家へ向かうと、家族は部長をすっかり気に入ってしまい、結婚の話まで持ち出す始末だった。
そうして私たちは、お正月を実家で過ごし、東京へ戻ってきた。
家へ帰った時、何かが足りないような気がした。
胸の奥にぽっかり穴が空いたような、そんな違和感。
でも、その正体はわからない。
気のせいだろう。
私はそう思うことにした。
ピピピピーッ。
目覚まし時計が鳴る。
「会社行きたくねぇよぉ……」
小さくぼやきながらアラームを止め、いつものように着替えを始める。
寝室を出て、何気なくキッチンへ目を向けた。
「……」
誰もいない。
当たり前なのに、なぜか少し寂しかった。
「お腹すいたなぁ」
前までは朝ご飯なんて食べなくても平気だったのに、最近は朝から空腹を感じる。
なんでだろう。
まぁいいや。
今日は仕事始めだ。
「よし、気合い入れていこう」
靴を履き、玄関のドアを開ける。
「行ってきます」
返事なんて返ってくるはずないのに。
なぜか、その言葉が自然と口をついて出た。
新年最初の満員電車は、相変わらず息苦しい。
いつもの駅で降り、会社へ向かう。
自分のデスクに着いた瞬間だった。
「おはようございます、先輩。」
結奈ちゃんが、意味ありげな笑みを浮かべながら声をかけてきた。
……嫌な予感しかしない。
「先輩って、一ノ瀬部長と付き合ってたんですね。」
「えっ!? ち、違うよ!」
思わず大きな声が出る。
「だって、目撃者もいたし、部長も否定してませんでしたよ?」
「本当に?」
「『お正月は先輩と一緒だったんですか?』って聞いたら、『ああ』って普通に答えてました」
「部長ぉ……」
なんでそんな誤解されるような返事をするの。
私は頭を抱えた。
「まぁ、そのあと『彼氏のふりを頼まれただけだ』って説明してましたけど」
「よかった……」
胸を撫で下ろす。
すると結奈ちゃんは腕を組み、ニヤリと笑った。
「でも私は、まだ怪しいと思ってるんですよねぇ」
「もういいってば!」
私は慌ててパソコンの電源を入れる。
「ほら、仕事するよ!」
「はーい」
結奈ちゃんは口を尖らせながらも、自分の席へ戻っていった。
私は画面を見つめる。
それでも、心のどこかに残る、この喪失感だけは消えなかった。

