私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

夕食を食べ終えた私は、急に強い眠気に襲われ、そのまま部屋へ戻った。

布団に横になり、そっと目を閉じる。

すると、冷たい風が頬を撫でた。

「寒い……」

ゆっくりと目を開ける。

そこは、さっき散策で訪れた『軽之神社』だった。

「なんで……?さっきまで家にいたのに……」

辺りを見回す。

すると、私の目の前には、一つの古い塚が静かに佇んでいた。

『比翼塚』

私はゆっくりと石碑へ近づく。

そこには、目を疑う文字が刻まれていた。

『木梨軽皇子と大軽娘皇女を偲んで』

「まさか……ここが……」

その時だった。

「千紘……」

優しく名前を呼ばれ、私は振り返る。

そこには、白く淡い光に包まれた、一人の美しい女性が立っていた。

「あなたは……」

女性は静かに微笑む。

「ええ。私は、大軽娘皇女です」

その言葉を聞いた瞬間――

幼い頃の記憶が、一気に頭の中へ流れ込んできた。

小さな私。

この神社。

白い着物を着た女性。

「小さい頃……ここで、あなたに……」

「ようやく思い出してくださいましたね。」

皇女は優しく微笑んだ。

「でも……どうして私なんですか?」

皇女は静かに私を見つめる。

「あなたは、生まれながらに強い霊力を持っていました。だから私は、あなたに記憶を託したのです。」

「記憶を……?」

「そして、兄上様も」

私は思わず首を振る。

「そんな……私にそんな力があるわけ……」

「あります」

皇女は穏やかな声で続けた。

「兄上様を現代へ導き、私の想いを届けられるのは、あなただけでした」

胸が苦しくなる。

「それじゃあ……」

私は震える声で尋ねた。

「本当は、何があったんですか?」

皇女は静かに比翼塚へ目を向けた。