私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

私と悠真は、近所を散策することになった。

悠真にも、私が生まれ育った町を知ってほしいと思ったからだ。

「良いところだな」

「そう? ただの田舎だよ」

「まぁ、我らが住んでいる場所と比べればな」

「それはそうかも」

他愛もない話をしながら、冬の田舎道を歩いていく。

畑が広がり、遠くには山が見える。

子どもの頃から見慣れた景色。

「本当に何にもないなぁ」

そんなことを思いながら歩いていると、
道の脇に小さな神社が見えた。

鳥居も少し色あせていて、人の気配はほとんどない。

「あ……」

思わず立ち止まる。

石柱には、『軽之神社』と刻まれていた。

「どうしたのだ?」

気づけば、悠真が隣に立っていた。

「うわっ!」

「そんなに驚くことはないだろう」

「ぼーっとしてただけ」

「この神社を見ていたのか?」

「うん。小さい頃からある神社なんだけど、入ったことはないんだ」

悠真は鳥居を見上げる。

「そうか。」

少しだけ目を細めた。

「寂れた神社だな」

「そうだね」

悠真は特に気にする様子もなく、
そのまま歩き始めた。

私はもう一度だけ神社を振り返る。

その時だった。

「……千紘」

風に乗って、誰かが私の名を呼んだ気がした。

優しい女の人の声。

どこか懐かしくて、
胸が締めつけられるような声だった。

思わず鳥居の奥を見る。

しかし、そこには誰もいない。

「千紘、行くぞ」

悠真の声で我に返る。

「……うん」

私は小さく返事をして歩き出した。

それでも、背中に誰かの視線を感じる気がして、
もう一度だけ神社を振り返った。

でもl、木々の枝が冬の風に揺れているだけだった。