私が拾ったのは、千年前の皇子でした

「ど、どうしたのだ!」

急に男が、
私の顔を見て焦り出した。

「え?」

気づけば、
私の頬を涙が伝っていた。

美緒から話を聞いた時も、
悲しいとは思った。

でも――
本人の口から聞くのは、まるで違う。

胸の奥が、
ぎゅっと締め付けられる。

そして何より、
私の心のどこかで、
何かが揺れている気がした。

「……なんでもない」

私は慌てて涙を拭う。

「そうか……」

男は安心したように息を吐きながらも、
心配そうに私を見つめていた。

その表情に、
なぜか見覚えがある気がする。

とりあえず、
彼が木梨軽皇子本人で、
なぜか現代へ来てしまったということは、
もう間違いないだろう。

謎なのは、
なぜ私が軽大娘皇女にそっくりなのか。

そして、
なぜ彼が私の前に現れたのか。

……まぁ、
今考えたところで分かるわけでもない。

まずやるべきこと。

それは――

今、冷蔵庫を開けたり閉めたりして遊んでいる、
この男を現代に慣れさせることだった。