私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

どんちゃん騒ぎも終わり、
父は大きないびきをかきながら、
居間で気持ちよさそうに眠っていた。

祖父母も自分の部屋へ戻り、
悠真はお風呂に入っている。

「はぁ……」

私はため息をつきながら、
母と並んで食器を洗っていた。

「帰ってくるんじゃなかったかなぁ」

冗談交じりにそう言うと、
母は眠っている父を見つめて、優しく笑った。

「みんなね、千紘が帰ってくるのを楽しみにしてたのよ。お父さんなんて、何日も前から落ち着かなくて。『掃除しろ』『布団を干せ』って、ずっと騒いでたんだから」

思わず笑ってしまう。

あのお父さんが。

「それにね」

母は少し照れくさそうに続けた。

「あなたが最近あまり帰ってこないから、寂しかったんだと思う」

「そうなのかな……」

「そうよ」

母は迷いなく頷く。

「素直じゃないだけ」

「ふふっ」

「それに、悠真くん」

母は少し声を弾ませる。

「本当にいい子ね」

「うん」

「礼儀正しいし、優しいし……」

少し間を空けて、

「何より、イケメンだもの」

「そこ?」

「そこ大事」

私は思わず吹き出した。

こうして母と並んで台所に立つのは、
いつぶりだろう。

洗い物をしながら、子どもの頃を少し思い出した。

「お母さん」

「なぁに?」

「今度からは……もう少し帰ってこようかな」

母は一瞬だけ手を止める。

そして、とても嬉しそうに笑った。

「うん。みんな、楽しみに待ってるから」

その笑顔を見て、帰ってきてよかった。

心の底から、そう思えた。