私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

「大きく、立派な建物だな」

「見た目だけだよ」

そう言って私は家の扉を開ける。

ガラガラ。

私の実家は古い。

今時引き戸だなんて、いつの時代だよ。

「ただいま〜」

私が声を発すると、家の奥の方から、
ドタドタと激しい足音が聞こえてきた。

「おかえり〜」

そうして慌ただしく現れたのは、
私の母だった。

「もう何年ぶりに帰ってきたかと思ったら、
そんな浮かない顔して〜」

「お母さんが元気だからだよ」

「まぁ!こちらが悠真さん?」

「あ、はい。千紘とーー」

「すっごくイケメンさんじゃない!
 お母さん照れちゃう!」

お母さんは弾丸トークで、私たちの言葉など聞かず、
一人で盛り上がっている。

「ねぇ、寒いんだけど」

「あ、ごめんなさいね。さぁ悠真さんも遠慮せずに」

「あ、ありがとうございます」

あの悠真押されている。

我が母ながらコミュ力は素晴らしいと思う。

「全然似ていないのだな」

私の耳元で悠真が囁く。

「あれが特殊なだけ」

私も小さな声で返す。

私たちは長い廊下を歩く。

実家は年季が入っているが、立派な建物だ。

どうやら、昔は地主だったらしい。

今の時代には関係ないのだけど。

長い廊下を抜けると、居間がある。

そこには、すでに父と祖父母がテーブルを囲んで座っていた。

「千紘たちが帰ってきましたよ〜」

母の言葉で、全員の視線がこちらへと向く。

「た、ただいま」

なんなの、この殺伐とした空気。

よく見ると、みんな悠真のことをじっと見つめている。

「は、はじめまして。木梨悠真と申します」

そう言って、悠真は頭を下げた。

「そうか。まぁ座れ」

祖父の言葉に従いながら、恐る恐る、
悠真は席についた。

「それで?」

「え?」

父が急に悠真に鋭い視線を向ける。

私は心配になり、悠真を見守る。

「君は、千紘のことをどう思っている」

父は真っ直ぐ悠真を見つめた。

悠真は言葉を失う。

何を答えればいいのか、
必死に考えているのが伝わってくる。

というか、一番最初に聞くことじゃないでしょ。

部屋の中は静まり返っている。

私は心配になり、
そっと悠真の手に自分の手を重ねた。

その温もりに気づいた悠真は、小さく息を吸う。

そして、父をまっすぐ見て言った。

「僕は……」

少しだけ言葉を探すように間を置く。

「千紘を幸せにしたいです。」

その一言に、部屋の空気が変わった気がした。

「なぜだ?」

父はさらに問いかける。

悠真は少しも目を逸らさない。

「千紘は、僕にたくさんの幸せをくれました。
この世界のことを何も知らなかった僕を助けてくれました。毎日笑わせてくれました。僕は、その恩を返したい。」

そこで一度言葉を切る。

そして、静かに続けた。

「だから、一生をかけて、僕が千紘を幸せにしたいと思っています。」