私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

「姫様、姫様!」

突然大声で呼ばれ、目を覚ます。

「ここは……」

私は以前倒れた明日香村の丘の上に立っていた。

そこには、大きな木もなく、
小さな神殿があるだけだった。

私はそこから、丘の下を見下ろしていた。

「姫様!」

振り返ると、見たことのある人物がいた。

「一ノ瀬、部長……?」

「姫様、軽皇子様が……」

そう言うと、部長によく似たその人物は、
目に涙を浮かべながら私の腕を強く掴んだ。

痛い……。

「姫様、落ち着いて聞いてください。木梨軽皇子様は、流刑に処されました」

「流刑……?」

「はい。残念ながら、もう二度とお会いすることはできないでしょう……」

「もう、会えない?」

「……はい」

「あなたは?」

「姫様が混乱するのは無理もございません。
私はお二人がお育ちになるのをずっと見守っておりましたから、受け入れ難い事実だと思います」

「兄上はどこに流されたのですか?」

「伊予国です」

「伊予国……」

その名を聞いた瞬間、私は走り出していた。

「姫様!お待ちください!」

「いやじゃ!妾は兄上様と離れるくらいなら、生きてはおれぬ!」

追手を振り払い、必死に走る。

衣が泥に汚れようと、足から血が流れようと、
構わず走り続ける。

遠くに海が見えた。

「兄上様……!」

その瞬間、誰かの手が私の肩を掴んだ。

「姫様――!」

そこで視界が真っ白になる。