私が拾ったのは、千年前の皇子様でした

思いの外、早く予定を終えた私たちは、
近くのカフェに来ていた。

最初のうちは、他愛もないアラサー女子の会話だった。

「私、考えたんだけどさ」

急に真剣な表情になる美緒。

「悠真さんがタイムスリップした木梨軽皇子っていうのは、多分間違いないと思う」

「うん」

私は頷く。

「でもさ、あんたが軽大娘皇女の生まれ変わりっていうのは、ちょっと違う気がするんだよね」

その言葉に、私は目を丸くした。

「どうして?」

「だって、おかしくない?」

美緒はテーブルに肘をつき、指を組む。

「彼だけが千五百年後に来て、そのうえ都合よく顔がそっくりなあんたと出会うなんて、出来すぎてる」

「……」

「それに、夢だって今までは見たことなかったんでしょ?」

「うん」

「悠真さんに会ってから見るようになった」

「だったらさ」

美緒は私を真っ直ぐ見た。

「思い出してるんじゃなくて、呼び起こされてるんじゃない?」

「呼び起こされてる?」

「うん。」

「悠真さんが持ってる千五百年前の記憶や想いが、あんたの魂と共鳴してる」

「……」

「だから、少しずつ昔の景色や感情が流れ込んでくる」

「共鳴しているだけ……」

私はその言葉を何度も頭の中で繰り返した。

そう考えると、夢を見るようになった理由も。

明日香村で突然景色が変わったことも。

少しだけ説明がつく気がした。

「でもさ」

私は首を傾げる。

「何と共鳴してるんだろう?」

「そこなんだよね」

美緒は苦笑する。

「顔が似てるだけじゃ、説明できないもん」

私は窓の外を見る。

もし、夢を見続けたら。

もし、あの声の続きを思い出したら。

何かわかる日が来るのだろうか。

「美緒、ありがと」

「うん」

美緒は優しく笑った。

「答えが出なくても、一人で抱え込まないこと。
また何でも相談しな」

「うん」

私は小さく頷いた。

美緒がいてくれて、本当によかった。