夜風にさらわれたお姫様


「榴愛ちゃーん」

背後から声が聞こえ、振り返る。

そこには店長の佐伯悠真(さえきゆうま)が立っていた。

「気を付けて帰れよ」

「大丈夫ですって。そんな子供じゃないですー」

「夜坂街の夜は油断すんな。特にこの時間」

「またその話ですか?」

榴愛は苦笑した。


悠真は昔から時々変なことを言う。

“夜は危ない”
“裏の人間には関わるな”

まるで昔のドラマみたいな話ばかりだ。


「……ま、いい。何かあったら連絡しろ」

「はいはい」

軽く手を振って歩き出す。


けれど。

その時。

遠くで――。

ブォォォォン……!!

低いバイク音が響いた。


「……」

榴愛は少しだけ足を止める。

なんだろう。

妙に胸騒ぎがした。

けれど気のせいだと思い直し、再び歩き出した。