トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

今日一日

いやこの数日間ずっと欲しかった言葉だった

俺は小さく笑う

「頑張った」

正直に答えた

すると紗凪も少し笑う

「知ってる」

その返事が優しすぎて思わず腕を伸ばした

紗凪の腰を引き寄せる

「わっ」

小さな声

でも抵抗はしない

そのまま俺の胸へ収まる

安心する

本当に

不思議なくらい心臓の音が落ち着いていく

「会見どうだった?」

紗凪が聞く

「見てた?」

「うん」

少しだけ恥ずかしい

でも嬉しい

「奏くん頑張ってた」

「……うん」

「陽貴くんも」

俺は苦笑した

「俺は別に」

「別にじゃないよ」

紗凪が顔を上げる

真っ直ぐな目

「すごく頑張ってた」

その目を見ていられなくて俺は紗凪の頭を撫でた

柔らかい髪落ち着く香り

帰ってきたんだなと思う

ようやく

本当に

「ご飯食べる?」

「食べる」

「今日はちゃんと食べてね」

「はい」

なんだか夫婦みたいだなと思う

口には出さないけど

きっと言ったら紗凪は照れる

そんな時間が心地よかった

それから二人で夕飯を食べた

他愛ない話をする

病院の話

梓ちゃんの話

今日の出来事

重たい話題はあえて避けた

その方が良かった

今夜くらいは普通でいたかった

食後

ソファで並んで座る

テレビはついているけど内容はあまり頭に入ってこなくて

気付けば紗凪が俺の肩へ寄りかかっていた

俺も自然と肩を寄せる

静かな時間

何もしない時間

それがこんなに幸せだなんて昔の俺は知らなかった

トップアイドルになって

たくさんの人に応援されて

大きなステージに立って

夢も叶えた

でも

今思う

一番幸せなのは

こういう時間なのかもしれない

隣に大切な人がいて

何も気にせず笑えて

「眠そう」

紗凪が小さく笑う

「眠い」

「今日はいっぱい頑張ったもんね」

子どもみたいな言い方に思わず笑ってしまう

「じゃあ寝よっか」

「うん」

二人で寝室へ向かう

ベッドへ入る

久しぶりだった

何も考えずに眠れそうな夜は

紗凪が隣へ潜り込む

自然と腕の中へ引き寄せる

「陽貴くん」

「ん?」

「本当に、お疲れさま」

小さな声

俺はその額へそっとキスを落とした

「ありがとう」

紗凪が少し照れたように笑う

その顔が可愛くて

思わずもう一度抱き寄せた

部屋は静かだった

外の灯りだけが薄く差し込んでいる

明日になればまた現実が待っている

世間の声も

週刊誌も

黒騎士の問題も

何一つ終わっていない

それでも

今だけは

考えるのをやめようと思った

腕の中には紗凪がいる

温かい

安心する

胸の奥が満たされる

あぁ

幸せだ

本当に

久しぶりに

心からそう思えた

俺は紗凪の髪を優しく撫でながら目を閉じる

隣から聞こえる穏やかな寝息

その音を聞いているだけで

世界が少しだけ優しく思えた