トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

陽貴side

会見が終わったのは予定を大幅に超えた頃だった

二時間近く

ずっと張り詰めっぱなしだった神経が限界を迎えていた

控室へ戻った瞬間

蒼依がソファへ倒れ込む

「……やばいっす」

優朔もネクタイを緩めながら苦笑した

「人生で一番疲れたかもしれない」、

俺も椅子へ腰を下ろす

背もたれに体重を預ける

心臓はまだ速い

手のひらも少し汗ばんでいた

隣を見る

奏は無言だった

ただ椅子に座り俯いたまま

会見中は気を張っていたのだろう

終わった今、一気に疲労が押し寄せているように見えた

その時控室の扉が開く

黒瀬さんだった

俺たちは自然と顔を上げる

黒瀬さんは俺たちを見る

数秒

何も言わなかった

そして

ふっと笑う

「上出来だ」

その言葉に部屋の空気が少しだけ緩んだ

「特に奏」

黒瀬さんが続ける

「よく最後まで立った」

奏がゆっくり顔を上げる

黒瀬さんは頷いた

「正直、会見前は心配してた」

「途中で潰れるかもしれないって」

その言葉に奏が苦笑する

「……俺も思ってました」

掠れた声だった

黒瀬さんは少しだけ笑った

「でも最後までやり切った」

「それだけでも大きい」

そう言ってスマホを取り出す

「まだ全部は分からないが」

「今の反応は悪くない」

その言葉に全員が顔を見合わせた

悪くない?

そんなはずあるのか

俺は恐る恐るスマホを開く

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正直

地獄を覚悟していた

でも画面を見た瞬間

思わず手が止まる

『桜庭奏の会見見たけど普通に誠実だった』

『逃げずに二時間答えたのはすごいと思う』

『あの状態で会見出てきたの相当しんどかっただろ』

『黒騎士全員が奏を信じてるの泣ける』

『陽貴の言葉が刺さった』

『優朔の「信じてる」の一言重かった』

『蒼依ずっと奏の方気にしてたな』

『仲間っていいな』

どんどん流れてくる

もちろん厳しい意見もある

『まだ信じられない』

『証拠が出るまで分からない』

『アイドルだから庇ってるだけでは?』

そういう声も少なくない

でも予想していたほどではなかった

むしろ擁護する声の方が目立つ

蒼依も横から覗き込む

優朔もスマホを見る

「思ったより風向き変わってるな」

俺はさらにスクロールする

すると動画の切り抜きが流れてきた

会見終盤

奏が言った言葉

『僕はやっていません』

そのシーンだった

再生数はすでに何十万回

コメント欄には

『この目は嘘ついてるように見えない』

『なんか見てたら泣きそうになった』

『頑張れ奏』

『黒騎士応援してる』

そんな言葉が並んでいた

そして別の投稿

『精神的苦痛を受けているのは桜庭さんも同じです』

宮城先生の発言が記事になっている

その下には

『確かにそうだよな』

『まだ何も証明されてないのに叩きすぎ』

『人を追い込むのは違う』

そんなコメント

奏の喉が動く

そして小さく呟いた

「信じてくれてる人……いた」

部屋が静かになる

その声は震えていた

俺は何も言わない

優朔も

蒼依も

黒瀬さんも

誰も

ただ聞いていた

奏は画面を見つめたまま続ける

「もう……みんな俺のこと終わったと思ってるかと思った」

その言葉に胸が痛む

昨日の奏なら本気でそう思っていただろう

世界中が敵に見えていたはずだ

でも違った

少なくとも信じてくれる人はいた

味方はいた

俺はそっと奏の肩を叩く

「だから言っただろ」

奏がこちらを見る

俺は少しだけ笑った

「お前が積み上げてきたものはそんな簡単になくならない」

奏の目が少し潤む

そして小さく頷いた

その姿を見ながら俺は思った

まだ終わっていない

問題は山積みだ

週刊誌との戦いも

真相解明も

これからだ

それでも昨日まで真っ暗だった未来にほんの少しだけ

光が差し込んだ気がした