紗凪side
「休憩入ります」
そう声を掛けてナースステーションを離れる
午前中は慌ただしかった
術後入室、転棟調整、急な検査出し
気付けばあっという間に昼だった
休憩室のドアを開けるとすでに梓が座っていた
「お疲れ」
「お疲れ」
私は隣へ腰を下ろす
お弁当を開けて食べる
でも正直、味なんて全然分からなかった
今日は黒騎士の記者会見の日だから
朝からずっと気になっていた
陽貴くん
優朔さん
蒼依くん
そして奏くん
今どんな顔をしているんだろう
ちゃんと話せているだろうか
奏くんは大丈夫だろうか
そんなことばかり考えてしまう
梓がスマホを操作する
「始まってる」
その一言に私の心臓がドクンと鳴った
画面にはニュース配信サイト
そこでは黒騎士の記者会見が生中継されていた
映像が映る
会見場、無数のカメラ、フラッシュ
そして黒いスーツ姿の四人
思わず息を呑む
陽貴くんがいる
優朔さんがいる
蒼依くんがいる
そして奏くんも
私は画面へ釘付けになった
「顔色は昨日よりマシだね」
梓がぽつりと言う
私も頷く
確かに
まだ疲労は見える
でも昨夜のあの状態よりはずっといい
それだけで少し安心した
画面の中では記者たちの質問が続いていた
鋭い質問
嫌な質問
見ているだけで胃が痛くなる
それでも四人は逃げない
真正面から向き合っている
特に陽貴くん
リーダーとして何度も質問を受けていた
表情は冷静
声も落ち着いている
でも私は知っている
今どれだけ不安なのか
昨夜ソファで抱きしめながら聞いたから
怖い
そう零した声を
知っているから
だから余計に胸が苦しくなる
「……頑張れ」
気付けば小さく呟いていた
梓も画面を見つめている
優朔さんの姿を
ずっと
そして会見が進む中ついに奏くんへの質問になる
休憩室が静まり返る
私も梓も自然と箸を止めていた
画面越しでも分かる
奏くんは緊張していた
でも逃げずにしっかり前を向いている
そして
最後の質問
『今、一番伝えたいことは何ですか』
その言葉に奏くんがゆっくりマイクを握る
私は無意識に息を止めた
奏くんは少し俯き
そして顔を上げた
『……正直、怖かったです』
その言葉を聞いた瞬間
胸が締め付けられる
昨日の夜
泣きながら
震えながら
“俺もう終わりだ”
そう言っていた姿が頭に浮かぶ
でも今は違う
ちゃんと前を向いている
『信じてくれる人がいました』
その言葉に
私は思わず目を伏せた
信じてくれる人
仲間
ファン
家族
色んな人がいるのだろう
そして
『僕はやっていません』
真っ直ぐな声
迷いのない目
休憩室は静まり返っていた
梓も何も言わない
ただじっと画面を見つめている
しばらくして
梓が小さく息を吐いた
「……強いね」
私は頷く
「うん」
本当に強いと思った
傷付いて
苦しんで
それでも立ち続けることは簡単じゃない
会見場にはいない
隣にもいない
でも
今だけは
画面越しに心の中で願う
どうか
届いて
あなたたちの言葉が
ちゃんと必要な人へ届いてくれますように
「休憩入ります」
そう声を掛けてナースステーションを離れる
午前中は慌ただしかった
術後入室、転棟調整、急な検査出し
気付けばあっという間に昼だった
休憩室のドアを開けるとすでに梓が座っていた
「お疲れ」
「お疲れ」
私は隣へ腰を下ろす
お弁当を開けて食べる
でも正直、味なんて全然分からなかった
今日は黒騎士の記者会見の日だから
朝からずっと気になっていた
陽貴くん
優朔さん
蒼依くん
そして奏くん
今どんな顔をしているんだろう
ちゃんと話せているだろうか
奏くんは大丈夫だろうか
そんなことばかり考えてしまう
梓がスマホを操作する
「始まってる」
その一言に私の心臓がドクンと鳴った
画面にはニュース配信サイト
そこでは黒騎士の記者会見が生中継されていた
映像が映る
会見場、無数のカメラ、フラッシュ
そして黒いスーツ姿の四人
思わず息を呑む
陽貴くんがいる
優朔さんがいる
蒼依くんがいる
そして奏くんも
私は画面へ釘付けになった
「顔色は昨日よりマシだね」
梓がぽつりと言う
私も頷く
確かに
まだ疲労は見える
でも昨夜のあの状態よりはずっといい
それだけで少し安心した
画面の中では記者たちの質問が続いていた
鋭い質問
嫌な質問
見ているだけで胃が痛くなる
それでも四人は逃げない
真正面から向き合っている
特に陽貴くん
リーダーとして何度も質問を受けていた
表情は冷静
声も落ち着いている
でも私は知っている
今どれだけ不安なのか
昨夜ソファで抱きしめながら聞いたから
怖い
そう零した声を
知っているから
だから余計に胸が苦しくなる
「……頑張れ」
気付けば小さく呟いていた
梓も画面を見つめている
優朔さんの姿を
ずっと
そして会見が進む中ついに奏くんへの質問になる
休憩室が静まり返る
私も梓も自然と箸を止めていた
画面越しでも分かる
奏くんは緊張していた
でも逃げずにしっかり前を向いている
そして
最後の質問
『今、一番伝えたいことは何ですか』
その言葉に奏くんがゆっくりマイクを握る
私は無意識に息を止めた
奏くんは少し俯き
そして顔を上げた
『……正直、怖かったです』
その言葉を聞いた瞬間
胸が締め付けられる
昨日の夜
泣きながら
震えながら
“俺もう終わりだ”
そう言っていた姿が頭に浮かぶ
でも今は違う
ちゃんと前を向いている
『信じてくれる人がいました』
その言葉に
私は思わず目を伏せた
信じてくれる人
仲間
ファン
家族
色んな人がいるのだろう
そして
『僕はやっていません』
真っ直ぐな声
迷いのない目
休憩室は静まり返っていた
梓も何も言わない
ただじっと画面を見つめている
しばらくして
梓が小さく息を吐いた
「……強いね」
私は頷く
「うん」
本当に強いと思った
傷付いて
苦しんで
それでも立ち続けることは簡単じゃない
会見場にはいない
隣にもいない
でも
今だけは
画面越しに心の中で願う
どうか
届いて
あなたたちの言葉が
ちゃんと必要な人へ届いてくれますように


