トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

しばらくして浴室のドアが開く音がした。

私は反射的に顔を上げる。

そこにはシャワーを浴び終えた奏くんが立っていた。

陽貴くんの黒いTシャツにスウェット。

サイズが少し大きいせいで余計に身体が細く見える。

髪はまだ少し濡れていて。

顔色も完全には戻っていない。

熱のせいだろう。

頬は赤く目元には濃い疲労が残っていた。

何より立っているだけで精一杯なのが分かる。

私は思わず立ち上がった。

「大丈夫?」

奏くんが小さく笑う。

「……大丈夫っす」

その返事に説得力はなかった。

歩く足取りも少し重い。

シャワーを浴びただけなのに体力をかなり消耗したのだろう。

陽貴くんも同じことを思ったらしい。

すぐに立ち上がった。

「奏」

「はい」

「もう少し寝た方がいい」

優しい声だった。

奏くんは一瞬だけ何かを言おうとして。

でも結局、小さく頷く。

「……そうします」

そして少し間を置いて。

「ありがとうございます」

そう言った。

その言葉に。

陽貴くんも私も何も返せなかった。

きっと奏くん自身も。

色んな感情が混ざっているのだと思う。

申し訳なさ。

不安。

恐怖。

感謝。

全部。

整理できないまま抱えているのだろう。

奏くんはゆっくり寝室へ向かう。

ドアが閉まる音が静かに響いた。

その背中を見送ってから。

陽貴くんが私を見る。

「ここからは代わるよ」

少し疲れているはずなのに。

その目はしっかりしていた。

私は小さく笑う。

「うん」

「ありがとう」

陽貴くんも微笑んだ。

「今日は十分頑張っただろ」

その言葉に。

今になってどっと疲れが押し寄せてくる。

確かに。

朝から本当に色々ありすぎた。

記事。

奏くんのパニック。

高熱。

往診。

話し合い。

気が張っていたから忘れていたけれど。

身体は正直だった。

「じゃあお言葉に甘えます」

私はそう言って立ち上がる。

陽貴くんが「おやすみ」と笑う。

「おやすみ」

そう返して自室へ向かった。

ベッドへ腰を下ろす。

その瞬間全身から力が抜けた。

窓の外は真っ暗で。

時計を見ると、もう深夜を回っている。

明日もきっと大変だ。

黒騎士にとっても。

奏くんにとっても。

陽貴くんにとっても。

でも。

今日だけは。

少しでも休まないと。

私は毛布へ潜り込む。

瞼が重い。

意識が沈んでいく。

最後に思い浮かんだのは。

苦しそうな奏くんの顔と。

それでも仲間を守ろうとしていた陽貴くんの姿だった。

どうか。

明日は少しでも良い方向へ進みますように。

そう願いながら。

私はすぐに深い眠りへ落ちていった。