トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

「……はい、約束通りしたからね!」

これ以上恥ずかしさに耐えきれず、逃げるように布団から抜け出そうとした、その瞬間だった

「きゃっ……」

手首を強い力で引かれ、私の身体は重力に従うように再び柔らかなベッドへと沈み込む

気がついた時には、抗う隙もなく、彼の逞しい腕の中にすっぽりと閉じ込められていた

「そんな可愛いので、許してもらえると思ってたの?」

視線の先で、彼はひどく意地悪に微笑んでいる。

……しまった

そう後悔した時には、すべてが遅すぎた

「……んっ……ふ、ぅ……」

脳裏が痺れるほどの、深く甘い口づけが容赦なく降ってくる

何度も、角度を変えて

呼吸を整える隙さえ与えてもらえない

酸欠で意識が遠のきそうになり、私は縋りつくように陽貴くんのシャツの胸元をぎゅっと掴んだ

そんな私の必死な抵抗を見て、陽貴くんの瞳がさらに妖しく熱を帯びて細められる

「紗凪ちゃんさぁ……そんな潤んだ目で、僕のこと誘ってるの?」

低く、鼓膜を甘く溶かすような声

「ねえ、誘ってるよね?」

「これ、加減しなくていいって意味で捉えていいの?」

その表情には、テレビの向こうで見せる“完璧な王子様”の影なんてどこにもなかった

今の彼は、油断した獲物を追い詰める、獰猛な狼そのものだ

「……ちょっ……だめ、仕事……遅れ……ちゃう……」

必死に言葉を紡いで押し返そうとする

けれど、その抵抗は簡単にいなされ、両手首を掴まれたまま頭の上へと優しく押さえ込まれてしまった

さらに、陽貴くんの大きな手のひらが、するりと服の裾から滑り込んでくる

「……っ」

ただ肌が触れ合っているだけなのに、悔しいくらいに身体が熱くなって、彼の体温に反応してしまう。

……遅刻

たまには、少しくらい遅れてもいいかもしれない

そんな理性の切れる音が聞こえそうなほど、思考が甘く蕩けていく

私がゆっくりと身体の力を抜き、抵抗を諦めた、まさにその時だった

「——はい、おしまい」

耳元で楽しげな声が響いたかと思うと、一瞬で彼の体温が遠ざかった。

「……え?」

ベッドの上に取り残され、私は完全に思考が停止して呆然とする

さっきまでの、あの熱い熱を孕んだ狼さんは一体どこへ行ってしまったのだろう

陽貴くんは何事もなかったかのようにベッドから起き上がり、悪びれもしない涼しい顔で笑っている

「紗凪ちゃんさぁ」

「そんな簡単に流されちゃダメでしょ」

「そんなトロンとした目で見つめちゃって」

「ほら、早く起きないと本当に仕事遅れるよ?」

「…………」

数秒間、怒りと恥ずかしさで完全にフリーズする

そして、一気に沸点に達した

「陽貴くんが仕掛けてきたんでしょーっ!!」

叫びながら、手元にあった枕を全力で投げつける

陽貴くんは可笑しそうに声を上げて笑いながらそれをひらりとかわし、そのまま足取りも軽くキッチンへと向かっていく

「朝から元気だね、紗凪ちゃん」

「誰のせいでこうなったと思ってるの!?」

私は顔から火が出そうなほど真っ赤になったまま、再びベッドのシーツに顔を突っ伏した

恥ずかしい。恥ずかしすぎて、今すぐ消えてしまいたい

彼の計算通りの罠に、完全に流されかけていた自分が最高に悔しかった

そんな私を置き去りにして、張本人である陽貴くんは、どこまでも余裕たっぷりだった

リビングのソファに深く腰掛け、優雅な仕草で淹れたてのコーヒーを味わっている