トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

でも不安が消えた訳じゃない

明日の朝には記事が出る

世間はきっと騒ぐ

スポンサーも、テレビ局も、ファンも

どうなるかなんて分からない

俺は紗凪の肩へ額を預けたまま、小さく息を吐いた

すると紗凪がそっと俺の頬へ触れる

「陽貴くん」

「……ん?」

顔を上げる

そこには真っ直ぐ俺を見る紗凪がいた

迷いのない瞳

救命の現場で何度も命と向き合ってきた人間の目

強くて、優しくて、嘘がない

そして紗凪は静かに言った

「誰が何を言おうと」

「どんな結果になろうと」

俺は息を止める

紗凪は少しも目を逸らさない

「もし世界中が陽貴くんの敵になったとしても」

「私は絶対に陽貴くんの味方だから」

その言葉が真っ直ぐ胸に刺さった

あまりにも真っ直ぐで

あまりにも迷いがなくて

思わず言葉を失う

「だって私は陽貴くんを知ってるもん」

「テレビの中の佐野陽貴じゃなくて」

「家で朝なかなか起きなくて」

「コーヒー飲みながらニュース見て」

「疲れた日はソファで寝ちゃう陽貴くんを知ってる」

思わず笑いそうになる

紗凪は続ける

「そして…陽貴くんが誰よりも優しくて、どれだけメンバーやお仕事を大切に思っているのかも全部知ってる」

こんな状況なのに

少しだけ本当に少しだけ

心が軽くなった

「だから」

紗凪が俺の手を握る

「私は信じる」

「ずっと」

その瞬間胸の奥が熱くなった

あぁ

本当に

どうしてこの人は

俺が一番欲しい言葉を、こんなタイミングで言えるんだろう

誰にも言えなかった

誰にも見せられなかった

弱さも

恐怖も

全部

この人の前だと隠せなくなる

俺は紗凪の手を握り返した

少し強く

離さないように

「……反則」

「え?」

「そういうの」

紗凪がきょとんとする

俺は小さく笑った

「惚れ直すから」

途端に紗凪の顔が赤くなる

「なっ……」

照れて俯く紗凪

そんな姿が愛しくて仕方ない

俺はそっと紗凪を抱き寄せる

今度は守られる側じゃなくて

守りたいと思う側として

「ありがとう」

自然と零れた言葉

紗凪が胸元で小さく笑う

「…何もしてないよ」

その声を聞きながら俺は静かに目を閉じた

明日はきっと地獄だ

記事が出て世間は騒ぐ

黒騎士は大きな嵐の中へ放り込まれる

それでも

今だけは

この温もりがある

俺には帰る場所がある

信じてくれる人がいる

その事実だけで

もう少しだけ、戦おうと思えた