トップアイドルは白衣の天使に恋をする-Rebirth-

打ち合わせが終わったのは、夜の20時過ぎだった

大型特番前ということもあって、細かい確認事項が多い

立ち位置、トーク内容、SNS戦略、スポンサー対応

最近は音楽番組一つ取っても、求められるものが本当に多い

「お疲れさまでしたー!」

スタッフの声が飛び交う

俺も軽く頭を下げながら控室を出た

廊下を歩きながらスマホを見る

ロック画面には、昼間に紗凪が送ってきたメッセージ

『今日はオムライス作るね』

その文字を見ただけで、思わず口元が緩む

……重症だな、俺

昔なら考えられなかった

仕事が終わって、こんなに帰宅が楽しみになるなんて

しかも今は、“帰る場所”に紗凪がいる

それだけで、驚くくらい心が軽くなる

「陽貴」

後ろから声

振り返ると優朔だった

「ん?」

「顔緩んでるよ」

「分かりやすいっすねー」

その後ろから蒼依まで笑いながら入ってくる

「帰りたくて仕方ない顔してるっすもん」

奏まで乗っかってくる

「いいだろ別に…打ち合わせ終わったんだし」

だって実際、1秒でも早く帰りたい

紗凪に会いたくて仕方がない

朝見送ったばかりなのに、もう会いたいと思ってる自分がいる

それくらい紗凪といる時間が自然になっていた

「じゃあまた明日な」

「ほんと愛の力は偉大っすね〜」

後ろからの茶化す声を無視して帰路へ急ぐ

マンションへ向かう車の中、窓の外には夜景が流れていく

今日も疲れているはずなのに、不思議と気持ちは軽い

ふとスマホが震えた

『お仕事お疲れさま!』

『気をつけて帰ってきてね』

短いメッセージ

そのたった数文字で心が一気に軽くなる

俺は思わず笑ってしまった

マネージャーの黒瀬さんがバックミラー越しにこちらを見る

「最近ほんと幸せそうだな」

「……そう見えます?」

「うん、かなり」

即答だった

俺は窓の外へ視線を逃がす

否定はできない

紗凪と暮らし始めてから“帰りたい”と思える場所ができた

それは俺にとって、多分想像以上に大きい

どれだけ歓声を浴びてもどれだけ忙しくても

最後に帰る場所で、“おかえり”って笑ってくれる人がいる

それだけで、ちゃんと救われる

マンションへ到着しエントランスを抜け、エレベーターへ乗り込む

階数表示が上がっていくたびに、自然と足取りが軽くなる

……我ながら分かりやすすぎる

指紋認証をしてドアを開けた瞬間

ふわっと漂う、いい匂い

その瞬間、自然と笑みが零れた

「ただいま」

そう声をかけると

奥から、ぱたぱたと軽い足音が聞こえる

次の瞬間

「陽貴くん、おかえり!」

嬉しそうに笑う紗凪が、そこにいた


……あぁ、やっぱり




俺、この時間が一番好きだ